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5、法律で、アレルギー表示が変わったことをご存知でしたか?(その1) 食の安全サポートオフィス 藤森正宏/メールマガジン108号

ニュースや新聞であまり取り上げないので驚かれた方も多いかもしれません。たとえ知っていたとしても、店頭での表示にこれと言った変化がないので実感がわきません。実はこの法律、今年4月1日からスタートしたのですが、猶予期間が5年間(平成32年3月31日まで)とあって、新ルールへの移行が進んでいません。その理由はともかくとして、多くの食品事業者は来年度以降にならないと切り替えが困難としていますので、何かを急いでしなくては・・・と考える必要はなさそうです。
そこで、その1では、新しい法律“食品表示法”の概要を、その2では、わたし達に密接な加工食品のアレルギー表示について、私見も含めて解説したいと思います。

食品表示法ができた背景 
食品の表示は、複数の法律からなり、これが多岐にわたっているのでとても複雑で、消費者にとって分かり難いものとなっています。この様な問題を解決するため、食品衛生法、JAS法、健康増進法の3法の表示に係る規定を統合し、わかりやすい制度を目指したのが今回の法律です。

食品表示法の概要
上記3法に定められた具体的な表示のル−ル(表示基準)を統合したものです。従って、大改正と言うほどではないことから、注意深く見なければどこが変わったのか気づかないかもしれません。これまでの食品表示制度に新規が1つ加わり、変更点が10からなるものです。

新規 機能性表示食品
野菜や果物などの生鮮食品や加工食品、サプリメントなどについて、健康の維持・増進効果等を具体的に示すことができるようになりました。

変更点1 原材料名等の表示方法
旧表示では、原材料は重量の多い順に表示し、続いて食品添加物を多い順に表示しました。新表示では、重量順の表示はそのままですが、原材料と添加物の間に明確に区分をつけて表示することになりました。これによって、今までどれが添加物なのか分からなかったのが、よく分かるようになりました。


変更点2 アレルゲンの表示方法
(1)食品によっては、原材料や添加物が多岐にわたり、表示も多くなります。このため、そのまま全てのアレルゲンを表記すると、わかり難くなったり、記載スペースの関係で全てを表示することが困難になることがあります。
そこで、一定のルールのもと、法令で“代わりの表記(代替表記)”を定め、アレルゲンの表記を省略できる規定を設けています。例えば、卵の場合、「玉子、タマゴ、厚焼玉子」などは「卵」と同じであることが分かりますので、「(卵を含む)」と記載する必要はありません。
(2)こうした決まりの中で、旧表示では「卵黄」と「卵白」は「卵」の文字があるのでアレルゲンの表記は不要でしたが、新表示では、製造上、卵黄と卵白を完全に分離することが困難なこと、及び事故防止の観点から「卵黄(卵を含む)」・「卵白(卵を含む)」と記載します。


(3)同じく代替表記のうち、新表示では「特定加工食品とその拡大表記」を全廃しました。マヨネーズを事例に説明しますと、マヨネーズは卵を原料にしていることが広く知られています。旧表示では、アレルゲンが入っていることが容易に判断できる加工食品を法令でリスト化したのが「特定加工食品」であり、アレルゲンの表記は不要でした。
また、からしマヨネーズには、マヨネーズの名称があり、卵を含むことが理解できるため法令でリスト化したのが「その拡大表記」で、アレルゲンの表記は不要でした。
新表示では、こうした制度を全廃したので、「マヨネーズ(卵を含む)」、「からしマヨネーズ(卵を含む)」と記載します。皆様も日頃からお感じになっているように、連想ゲームのような表示は分かり難く、新表示となってわかり易さに一歩近づきました。

(4)新表示では、アレルゲンの表示は、原則、「個別表示」となります。個別表示とは、アレルゲンとなる原材料の一つひとつについてカッコ書きをして表示する方法です。
この表示は一見よさそうですが、実は省略規定があり、くりかえし出てくるアレルゲンは省略が可能で、旧表示と同様、アレルゲンを含む原材料が複数あっても分かりません。例えば、弁当のように、複数の調理食品のそれぞれに何が入っているのかを知りたくても、必要な情報が得られない場合もあり得ます。
(5)「一括表示」は、例外的に新表示でも認められました。この表示は、全ての原材料を記載した最後に、もれなく全てのアレルゲンをカッコ書きで「(一部に〇〇を含む)」と記載します。
旧表示では、原材料名の欄にアレルゲンが含まれる時は、重複するので一括表示に記載しなくてよく、「(原材料の一部に〇〇を含む)」と表示しました。
この様に、新・旧で表示の仕方が違うため、旧表示方法が認められる経過措置の間は特に注意が必要です。つまり、旧表示の一括表示を見て、全てのアレルゲンが表示されているものと勘違いすると、事故につながりかねません。
新表示の一括表示は、その食品に含まれる全てのアレルゲンを一目で確認できます。個別表示と比べ、どちらにメリットがあるのか、食品の特性によって異なるので何とも言えませんが、一つの食品に新・旧が混在する表示は禁じられています。



変更点3 表示面積が小さい場合の表示方法
包装面積が30㎠以下であっても、アレルギー表示が義務付けられました。30㎠と言うと、刺身に添付された練りワサビ程度のサイズで、こうした少量食品についても消費者が安心して選択できようになりました。

変更点4 製造所固有記号の使用方法
一括表示欄の最下段に「製造者」「販売者」などの表示責任者の項目があります。旧基準では、販売者名で表示する場合、販売者氏名・所在地に加え、事前に届け出た製造所の固有記号を付記すれば、実際の製造者氏名・所在地を記載する必要はありませんでした。平成25年の冷凍食品農薬混入事件では、消費者がパッケージの表示を見て、実際の製造工場が分からないなど食品産業全体に多くの教訓を残しました。
新表示では、原則として製造所固有記号は使用しません。ただし、同一製品を2個所以上の工場で製造する場合に限り、これを認めました。消費者庁では、この固有記号のデーターベース化をおこない、来年度には一般消費者が閲覧できるシステムをスタートさせるとしています。これで問題が発生した時は、迅速に対応できるようになります。

変更点5 栄養成分表示の義務化・ナトリウムの表示方法
原則、消費者向けの加工食品、添加物に栄養成分表示を義務付けました。新表示では、ナトリウムの量は食塩相当量で表示します。これで「ナトリウム量×2.54」の換算が不要になります。

変更点6 栄養強調表示の方法
(1)低減された旨の表示(カロリー等)及び強化された旨の表示(食物繊維等)には、基準値以上の絶対差に加え、新たに25%以上の相対差が必要になりました。
(2)強化された旨を表示する場合(ビタミン等)には、強化された旨の基準値以上の絶対差が必要となりました。

変更点7 栄養機能食品のルールの変更
栄養成分の機能が表示できるものとして、新たにn-3系脂肪酸、ビタミンKおよびカリウムが追加されました。

変更点8 加工食品と生鮮食品の区分の統一
JAS法の考え方に基づいて区分が整理されました。

変更点9 販売される添加物の表示方法  略

変更点10 通知に規定されている表示ルールの一部を表示基準に規定 略

■旧基準の表示が認められる期間
加工食品・添加物は平成32年3月31日まで。生鮮食品は平成28年9月30日まで。経過措置期間は、一つの表示の中に新・旧の表示の混在は禁止です。

“ぱっと見てわかる”新・旧表示の確認個所
商品を手にしてすぐわかる確認個所をまとめてみました。
ポイント1 原材料名等の表示を見る
新表示には「添加物」の項目がある。もしくは原材料名欄の中に「/」等で区分されている。
ポイント2 アレルゲンの“一括表示”を見る(個別表示は旧表示と同じ)
新表示は「一部に・・・」から始まる。一方、旧表示は「原材料の一部に・・・」から始まる。
ポイント3 栄養成分表示を見る
新表示には「食塩相当量」の項目がある。

次回は、わたし達に密接なアレルギー表示について、具体的な表示例を示しながら、もう少し詳しく見てみたいと思います。

(食の安全サポートオフィス 藤森正宏)


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2015年11月29日 08:20に投稿されたエントリーのページです。

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