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1.アレルギー情報 最前線/メールマガジン40号

☆☆☆愛知県教育委員会
「学校給食における食物アレルギー対応の手引き」解説その2☆☆☆

伊藤浩明(いとうこうめい)
(あいち小児保健医療総合センター アレルギー科)

手引きの第1章は「アレルギーの基礎知識」として,学校の先生に知っておいてほしい知識と,緊急時の対応について解説しています。
この解説では,医学的な理屈の説明よりも,アレルギーの症状はどんなものであるか,先生たちにイメージしていただくことを意図しています。それは,学校現場でアレルギー症状を経験した患者さんから,「症状が出始めた時に,先生がアレルギーだと気づかなかった」という話をよく聞くからです。逆に先生たちの中には,アレルギー症状というとアナフィラキシーショックで突然バッタリ倒れる,というイメージが強くて,過剰に不安を感じている雰囲気を感じることもありました。

例えば,即時型アレルギー反応で見られるじんま疹と,慢性的な湿疹とはずいぶん違うものです。アレルギーの病気を持った当事者にはよくわかるのですが,普段関わりのない人にとってはその違いを意識して観察する機会も少ないでしょう。
じんま疹が出ればアレルギー症状,とイメージしやすいのですが,実際のアレルギー症状では10〜20%は皮膚症状を伴わず,咳や腹痛だけが出現します。これをアレルギーと気がつくためには,「そういうこともある」という知識を予め持っていることが必要です。
症状が出たときの緊急性の判断も重要です。これまでに発行されている「アナフィラキシー対応マニュアル」などでは,重い症状に対する緊急対応が中心に書かれています。
しかし,実際に現場でおこる誤食事故では,「軽い」症状が90%以上を占めているのです。むしろ,その時点での初期対応が,重症化を防ぐために大切です。特に,咳き込みやゼイゼイといった呼吸器症状が重要で,皮膚症状であわてることはない,と解説しています。それに合わせて、対応の原則として,保護者への連絡と病院に搬送する判断ポイントを,シンプルに示しました。

エピペンの使用は重要なポイントです。しかし,実際にエピペンを所持する適応がある子どもは食物アレルギーの中でも10%以下です。
愛知県の公立学校でそれに該当する児童生徒は900人と推定されていますが,実際に処方を受けて所持している児童生徒は60人にすぎない,という調査結果があります。
それでも,ある市の教育委員会で行った養護教諭の調査で,70%以上の先生が「エピペンが心配」と回答されたという話を聞いたことがあります。
アレルギー=アナフィラキシー=エピペン=怖い!(= できない,自信がない,責任持てない,,,) という負の発想では,対応が進みません。症状を判断するポイントを押さえた上で,必要時には思い切って救急車の要請,というシンプルな対応マニュアルを提案しています。

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2010年03月31日 00:02に投稿されたエントリーのページです。

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