◇声援でプレー、最後の夏
田無工3年・斉藤潤選手
「お前しかいない」「落ち着いて自分のペースで投げろ」
一塁側ベンチから、メガホンを使って声を張り上げた。プレーできない自分の思いを、マウンド上で力投を続ける村田悠輔主将(3年)に送った。
1年秋からレギュラーに選ばれた。しかし、2年春に体中に発疹(はっしん)ができる「運動誘発性アナフィラキシー」を発症。野球はもちろん、運動することができなくなった。治療に専念することになり、休部状態に。それでも学校が終わると、校舎の窓から野球部の練習を眺め、「野球がしたいな」と思っていたという。
今年の夏の大会前、工藤一俊監督と村田主将ら3年生3人から「最後だから一緒に応援しよう」とベンチに入るよう言われた。この日はベンチから外にはほとんど出ないものの、大声でチームを鼓舞。そのかいあってか、初回に竹尾栄次朗選手(2年)の左越え2ランで先制すると、先発の村田主将が再三のピンチをしのぎ、完封勝利。村田主将は「みんなで声を掛け合って、絶対勝つんだという気持ちで投げました」と声援を力にした。
「一つでも多く勝って、夏の思い出をもう少し堪能したいです」。これまでの悔しさを取り返すかのように最後の夏を楽しんでいる。【松本惇】
■白球譜(毎日新聞7月17日地方版)