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1 「アレルギー情報見聞録」第3回 二村昌樹先生/メールマガジン47号

「科学的根拠」
独立行政法人国立成育医療研究センター アレルギー科
                       二村昌樹先生

今年は夏の暑い日が続いたせいか、今頃になってやっと秋を感じられるようになってきました。秋といえば「読書の秋」「芸術の秋」などありますが、普段の忙しい合間の時間にいろいろなことをゆっくりと考えることもある季節ではないでしょうか。
そこで今回はちょっと皆さんに考えていただきたいと思って「科学的根拠」について書かせていただきます。

今年の夏にニュースで「ホメオパシー」が話題になったことを覚えていますか?
ホメオパシーとは「心や細胞が抱える不自然なパターンを解放し、体の芯から健康を取り戻す自然療法」(日本ホメオパシー医学協会HPより抜粋)だそうです。がんの患者さんの中で、私たち医師が病院で行っている医療をやめて代替療法としてホメオパシーのみを利用して亡くなった方がいるということが問題になり新聞等で報道されました。アトピー性皮膚炎でも処方された薬をやめてホメオパシーを利用する患者さんを見かけることがありますが、一連の事件を受けて日本学術会議がホメオパシーの治療効果について「科学的な根拠がない」と会長談話を出しました。
そこでいう科学的根拠とは何でしょうか?

医学の進歩の中、それぞれの病気に対して数多くの治療法が考えだされました。現在でも普通に行われている治療法もあれば、効果がないとして全く行われなくなった治療法もあります。その治療の効果を判定するものが実験や調査で導き出させた結果、つまり「科学的根拠(エビデンス)」です。
実験や調査の結果には信頼の高さに応じて順番(エビデンスレベル)がつけられ、その基準は世界共通で決められています。

たとえばある治療法の効果について2つ調査がされたとします。1つはその治療法を患者さん5000人に試して効くかどうかを調べた調査A、もうひとつは患者さん200人をくじ引きで100人ずつ分けて、その治療を受ける人と治療を受けない人で比べた調査Bです。なんとなく前者の5000人での調査結果のほうが信頼性が高い気もしますが、科学的には後者の200人での調査結果が信頼性(エビデンスレベル)が高いとされています。ですから調査Aで効果ありとされても、調査Bで効果なしと判定されれば、総合的にはその治療法は効果がないと判定されます。
エビデンスレベルの基準では、たとえ学生が調査していたとしても実際に患者さんを対象にした調査結果のほうが、有名な大学教授などの専門家が調査データなしで「あの治療は効くと思うよ」といったことよりも信頼性が高いとされています。

今では多くの治療法について、そのエビデンスが検討され効果のある治療法が患者さんに提供されるようになりました。しかしまだ十分に検討されていない治療法も世の中には存在します。さらなる検討が必要なものについては、臨床研究として患者さんなどに協力してもらい検討を進めていくことになります。病院で臨床研究の募集を見かけたらエビデンスを検証しているんだと思ってください。

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2010年10月31日 12:28に投稿されたエントリーのページです。

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