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4 「肌に優しいシャンプーの選び方」第七回/メールマガジン59号

先月からシャンプー選定に関わるキーワードの意味するところを検証しています。先月は“低刺激”で、今月は“天然系”です。シャンプーで天然物を活用する場合は、素材の由来から、

1)天然物を原料として合成
2)天然物と同一物を合成
3)天然物から特定物質を分離
4)天然物を溶剤などで抽出

の4つのケースがあるのでこれらを広く“天然系”と捉えるのがよいと思います。

★天然物の安全性
天然物であれ合成物であれ“安全なものは安全”ですし、多少問題があるようなものもどちらにでもあります。天然物と化学物質はまったく別物のような感覚で考えられがちですが、実は天然物は化学物質の集合体(*)なのです。このため単独の化学物質にない大きな魅力を持っている半面、地域、気候などにより組成が変わる問題もあります。
(*)例えばバラの香りは500種類、人のタンパク質は10万種類といわれます。
この長所、短所をいかにうまく使いこなして行くかが大切です。天然物の活用法は、次のように分けられます。

★天然物を原料として製造された素材
シャンプーに使用される洗浄成分はごく一部のものを除き、このグループに属します。石けんは、天然油脂を原料とした界面活性剤ですが、アミノ酸系、高級アルコール系なども同じです。いずれも天然由来、植物由来と言えるので差がありません。洗浄成分については、“天然”よりも先月書いた“低刺激”の方が選定上の参考になります。
なお、天然界面活性剤としては、牛乳中のカゼイン、卵黄中のレシチン、ヘチマの茎、葉などに含まれるサポニンがありますが、シャンプーの洗浄成分として使用されることはありません。従って「天然」という場合は、「天然物を原料として・・・」と考えられるとよいでしょう。

★天然物と同一組成のものを化学合成または微生物合成した素材
ヒアルロン酸、ヒノキチオール、トレハロースなどがこれに属します。もともと使用実績のあるものが、量産できるようになり普及が進みました。天然にこだわる方もいますが、化学的には同一なので大いに活用して欲しいものです。さらに最近では、従来合成法だけであった保湿成分のBG (1,3-ブチレングリコール)が発酵法でも作られています。これも“天然系”の1つの形として加えてよいように思います。

★ 天然物の中から特定成分を分離・精製した素材
甘草の根から得られるグリチルリチン酸(消炎成分)、ビート糖の副産物である糖蜜から得られるベタイン(保湿成分)などがあります。特定成分を単離しているので効果がはっきりしています。また、グリチルリチン酸は極めて複雑な化学構造式の化学物質なので化学合成したら大変です。分離・精製だけでこの種のものを得られるのも天然物活用の魅力の1つです。

★天然物を溶剤で抽出(○○エキスと書かれる)または分離・精製した素材
  天然または自然派を謳った製品に好んで使用される素材です。多くの場合、BG、エタノールなどの溶剤で抽出されますが、その中の天然物の濃度は1%程度です。これをシャンプーに2%程度配合しないと効果を発揮しないと言われます。製品中濃度は0.02%となりますが、それでも効果が出るのは天然物の魅力でもあります。
天然物のなかにはアレルギーに効果のあるものもあります。しかし、Aさんに効いてもBさんにはマイナスという個人差もあるのが天然物利用の難しいところです。
ときどき天然物10種配合という例もありますが、そのままでは溶剤が20%にもなってしまうので実際には1つの天然物の配合濃度を下げます。それだけ効果が薄れる一方、アレルギー物質は微量でも影響が出ます。
従って、天然物が10種類も入っていればそれだけ効果がありそうで魅力的ですがそれだけリスクが増えることにもなります。これをどう考えるか、いろいろなご意見があると思いますが、私は、アレルギーを避ける効果的な方法は、“シンプルイズベスト”だと考えています。

★“天然系” “自然派”の見方
多くの方が天然、自然に安心感を持ち、化学物質に不安感をお持ちなので“天然系”などが謳われますが、“低刺激”の場合と同様、何をいって“天然系”としているか見極める必要があります。また、その技術的な背景も知った上で判断しましょう。
  一方、つくり手の方からすると、“天然系” “自然派”を謳う以上はお客様のご期待に応えられるだけの真に安全・安心なものを目指すべきであろうと思います。


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2011年10月31日 23:05に投稿されたエントリーのページです。

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