10月号から、シャンプー選定に関わるキーワードの意味するところを検証しています。先月は、“天然系”、今月は“無添加”です。
“無添加”を表示する場合は「何を無添加にしているのか」を示す必要があります。最も多く使われるのは「旧表示指定成分無添加」です。長く使用されていたので単に無添加と書くこともあります。旧表示指定成分を含まなければアレルギーを起こしにくい方向ではありますが、旧表示指定成分の制定経過、その後の運用の問題からみて単純に“無添加だから安心”とは言い切れません。なお、無香料については来月にお伝えします。
★表示指定成分
一般の方には安全性に何ら問題のない成分であっても、ごく稀にアトピーの素因（またはアレルギーの素因）のある方は、症状を呈することがあります。アレルギーの症状が出た時に何が原因であるかを医師などがテストしやすいように過去に事例があった成分を表示しておくこととしました。
100数種(香料はまとめて１種類として扱う)の原料が「表示指定成分」として表示が義務付けられていました。（法改正により現在は指定成分の表示はなく全成分表示になっています。）100数種のうち、防腐殺菌剤：35品目 エモリエント剤：11品目 酸化防止剤：６品目などです。それだけ防腐殺菌剤はアレルギーを起こしやすいということでもあります。
★制定の経過と問題点
過去に１回でもアレルギーの事例のあったものがすべて（使用方法が不適切と思われるものも含めて）指定されました。この結果、広く使用されている成分ほど指定される機会が増える一方、使用量が少ないために見逃されていた成分もあると考えられます。従って、指定されなかったからと言ってアレルギー性がないという保証はありません。
本来は、制定の経過からみてデータが蓄積された段階で発生する確率も考慮して再度設定すべきものだと思います。業界としてはデータを蓄積していたのですが行政が動かなかったとの話もあります。安全を優先して運用されなかったことは残念なことです。
★旧表示指定成分は避けるべきか？
過去に事例があった訳ですからアレルギーのある方は避けた方が無難です。しかし、アレルギーは個人差もあるので絶対避けなければいけないというものでもありません。ご自分の肌に合っていれば、それでよしとされるのがよいと思います。一般に低刺激性化粧品、敏感肌用化粧品では表示指定成分の配合を避けている例が多いようです。「あんだんて」では配合する素材につき高い安全性データが揃っていて使用実績も豊富なものを厳選したら旧表示指定成分は入っていませんでした。
★防腐剤無添加
化粧品では防腐剤の添加が義務付けられています。薬事法で定義された防腐剤を使用しなくても同等の性能をまもるべきです。従って防腐剤無添加であっても各社とも防腐性能は重視していて最大のノウハウになっています。無添加処方では必要な成分が入っていないので却って危険という評論家もいますが配合設計の実態をご存知ないのでしょう。防腐剤に限らず各用途に応じていろいろな素材が揃っていますので十分対応できます。ただ、旧表示指定成分は広く使用されて価格も比較的安いものが多いので無添加処方はコスト的に厳しい面はあります。
防腐剤の中ではパラベン(旧表示指定成分)が 色々な菌に効く特色があって多用されます。フェノキシエタノールは表示指定成分ではないので無添加処方ではよく配合されますが、対アレルギー面では極端な差はないように思います。
★その他の無添加
“鉱物油(＊)無添加”：発売初期にトラブルを起こしたので印象が悪いのですが、現在は改善されていて問題ありません。＊表示名：ミネラルオイル
“石油系界面活性剤不使用”：そもそもシャンプーでは使用されません。
いずれもどちらかと言えば、天然系を強調するために使われているようで技術的にはあまり意味がありません。
“ノンシリコーン”：シリコーン(珪素：シリコンを含む化合物)を配合して大きな問題はないのですが、傷んだ髪でも感触良化ができてしまうので、髪のケアがおろそかになりがちです。また、シリコーン独特のツルンとした指通りの感覚が好きでないなどの理由でシリコーンを配合しない“ノンシリコーン”が好まれることもあります。
★“無添加”の見方
何が“無添加”で、無添加にする技術的背景をしっかり見極める必要があります。特に旧表示指定物質の意味するところの理解が大切です。