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はじめまして。
リレートークの3回目を担当させていただきます松井照明です。
私は2013年度からあいち小児保健医療総合センター、アレルギー科で勤務しています。
前回の浮津先生のお話でもありましたように、当科では、特に食物アレルギーの患者さんが多く、毎日数多くの患者さんが来院されています。そのため、毎日約6人の患者さんが食物負荷試験を行っていて、全国的にも非常に多いのですが、それでも約4か月待ちの状態です。
これまで数多くの負荷試験を経験することで、食物アレルギーの症状に見慣れてくると、教科書的な知識にプラスして、この症状は食物アレルギー症状であろうとか、違いそうだなとか感覚的に分かってくるようになりました。また、食物アレルギー症状が実際に出てしまった患者さんや、ご家族からの話を伺うことで共通点として分かってくることがありました。日常生活で生じる食物アレルギーの症状は、思わぬ誤食から生じることが多く、原因となる食品を食べたかどうか分らない状況でも、それがアレルギー症状かもしれないと意識をして対応を進めることが非常に大切です。
今回は、その食物アレルギー症状の見分け方のコツについてお話をしたいと思います。
まずは教科書的な知識から、食物アレルギーの症状の原則を説明します。
・原則として食物の摂取2時間以内には症状が出現する。
・症状は皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器症状に分けられる。
皮膚:蕁麻疹、紅斑(皮膚が赤くなる)かゆみ
粘膜:目の充血、鼻水、くしゃみ、口、舌、喉の違和感
呼吸器:咳、ゼーゼー、ヒューヒュー、声が嗄れる、呼吸困難感
消化器:嘔吐、吐き気、腹痛、下痢
神経:活気の低下、不穏、意識障害
循環器:四肢の冷感、皮膚の蒼白(特に手足や口唇)、血圧低下、頻脈
アナフィラキシー:上記の症状が複数出現し、危険な状態。
・症状の頻度は皮膚症状が最も多く、8割以上で出現する。
・皮膚症状の次には、粘膜、呼吸器、消化器症状が多いが約2割程度。
・アナフィラキシーは典型例では食物摂取の数分以内に起こり非常に危険な状態である。
症状として頻度の高い蕁麻疹や、かゆみなどの皮膚症状が出始めている時には、それが食物アレルギーによる症状ではないかと疑い行動できることが大切です。
次に、教科書的には記載がありませんが、私が直接経験をしたり、患者さんやご家族と話をする中で分かってきたことについてです。
・特に1歳代くらいまでの幼少児が、食べ始めた時に、食べること自体を嫌がった時、まずいと言う時、食べた後に何となく不機嫌になったり、元気がないなどの際にはその後に症状が起こることが多い。
・その子その子で出る症状は同じことが多い。(例えば、蕁麻疹と咳が出たことがある人は、次に同じものを食べた時にも似たような症状が出る可能性が高い。)
・特に牛乳アレルギーの患者さんは、極わずかにしか牛乳が入っていない加工品などでも、口に入れるだけで、牛乳が入っていることを見抜くことがあり、食べ始めてすぐに何となく違和感がある、口の中や舌、喉などがピリピリすると表現されることが多い。
・アナフィラキシーは教科書的には数分以内に起こることが多いとされているが、30分以上経過してから起こることもあり、その症状も最初に何らかの症状が出始めてから30分程度と思ったよりもゆっくり生じることがある。
食事をしていて何となく嫌がるとか、ピリピリするなどの訴えがあるとか、普段とは違い不機嫌などの症状があれば、アレルギー症状の可能性を頭の片隅で考えてもらえるといいのではないかと思います。また、その子その子で、出やすい症状は似ていることが多いので、一度出たことのある症状を把握しておくことが大切です。一番危険である、アナフィラキシー時には特に迅速に対処する必要がありますので、何かアレルギー症状が出始めた時には、その症状がひどくなっていかないかどうか(アナフィラキシー症状に進まないかどうか)注意してみましょう。
読者の方の中には、お子さんや自分自身が食物アレルギーであるという方が多いと思います。その症状の対応等での一助になれば幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。