アレルギーっ子の防災
★第11回 2014.8.15「防災啓発ツールへの反映」 防災士 中根輝彦
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メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。
災害復旧支援・防災におけるアレルギー支援の取り組み事例について、一つ一つ紹介するシリーズ、第7回目です。
前回と前々回は「行政の災害用備蓄食」について紹介しました。各地の自治体の対応について情報共有や、アレルギー以外の災害時要援護者を巻き込んだ支援依頼についてのお話でした。
今回は、「防災啓発ツールへの反映」についてのお話です。アレルギー対応も災害時の重要な支援策であることを、広く一般の方々に知ってもらう方法について考えてみたいと思います。
これまでは、アレルギー関係者による周囲への働きかけの事例を紹介してきました。当事者からは、理屈は理解できても実際の行動に結びつけるのは困難、敷居が高い、自分のことで手一杯…。といった声が聞こえてきそうです。
前回の行政への依頼方法の試案で、福祉系・医療系の関係者も巻き込んだ依頼方法を考えました。特定の条件に当てはまる災害時要援護者の支援のうち、食物アレルギー患者の支援は何故こうも手薄なんだろうと、いろいろ思いをめぐらせています。施策の実現性、効果の大小、対象者の多少…、いろいろな条件から優先順位をつけて順に実施していくことは必要かもしれませんが、もっと対応を充実させて欲しいところです。
障害者福祉や高齢者福祉の支援は充実しているのに、アレルギー対応はなぜ…。当事者の自助努力だけでなく、社会的な課題として、社会全体で支えていく必要があるという認識にいたっていないことが、アレルギー支援策が手薄になっている一因ではないかと思うのです。
今回は、行政の担当部署へ依頼する「直球勝負」ではなく、防災啓発ツールにアレルギー支援の必要性を盛り込んでいこうという「変化球」的試案です。
阪神淡路大震災以降、自主防災組織による自助・共助が叫ばれ、防災啓発活動も盛んになってきました。啓発ツールもいろいろなものが開発されて、NPOやボランティア団体による活用が進んでいます。そういった啓発ツールにアレルギー支援のネタを仕込めば、ツールを活用してもらうことでアレルギー支援の必要性理解が進むのではないかという期待があります。
まずは、発災時にいろいろと起こってくる問題をどう解決するか訓練するツールに、問題の事例としてアレルギー支援要望を反映していく試みが考えられます。
クロスロードでは、二者択一のジレンマをどう解決するかをグループで考えますが、少数派意見として「金ざぶとん」をねらい、アピールするチャンスをもらう。その事例としてオリジナルの問題カードを作って、クロスロードゲームの発展形とするなど。
災害ボランティアコーディネータ養成講座では、ボランティアセンター運営訓練の中で、被災者ニーズの例としてアレルギー患者の食事支援を盛り込んでもらう。ボランティアセンターへの支援依頼を受理するか断って専門家へを紹介したり斡旋したりするなどの対応方法をどうするか検討してもらうなど。
自主防災組織への防災講話や備蓄品検討のリストなどで、アレルギー対応品をアピールしてみる。炊き出し訓練のメニューでアレルギー対応食を試食してみる。災害時要援護者支援の対象者としてどんな方が対象者になりうるか考えてもらい、アレルギー患者も対応が必要なことをアピールするなど。
防災対策の相談を受け付けているところへ、アレルギー支援について問い合わせてみる。
学校関係では、「命の教育」「食の教育」などを通じて、アレルギー支援を事例として盛り込むよう関係者や防災教育の検討の場へ提言していく。
今回は、「防災啓発ツールへの反映」により、アレルギー支援の必要性理解を加速させる試案を紹介しました。
次回は、「自治体のガイドラインやマニュアルへの要望申し入れの事例」について紹介します。
防災士 中根輝彦
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