メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。
今回は被害想定と目標設定についてのお話です。
日本は地震大国と言われるように、地震をはじめ多くの自然災害に襲われ、多大な犠牲を払ってきました。過去の経験を教訓として次の災害に備えるため、各方面防災の対策が進められています。中央防災会議(内閣府)は、いろいろな専門調査会を設置して被害予想や対策(の方針や概要)をまとめ、各種政策への展開を促しています。インターネットの「内閣府防災情報のページ」には、これまでに調査報告された災害の想定・被害予想・対策概要などがまとめられています。東海地震、東海・東南海地震、南海トラフ地震、首都直下地震、中部圏・近畿圏直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの情報が掲載されていますので、自分が住んでいる地域でどんな地震が予想されているか、確認してみて下さい。
「内閣府防災情報のページ」を確認したけど、自分が住んでいる地域には被害予想がない!って方はいますか?気象庁や日本気象協会などの地震情報ページによれば、毎日のように全国で地震が発生しているのに、なんで中央防災会議の専門調査会は一部の地震についてしか対策の検討をしないんだろう?とか、不公平じゃない?とか、兵庫県南部地震(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東北地方太平洋沖地震(2011年)の専門調査会がなかったのはどうして?とか思ったりしませんか?
実は、中央防災会議の調査は100%完ぺき(理想的な対応)ではないんです。このような表現をすると関係者から叱られそうですが、実際、前述のように検討されていないけど被害が出てしまった災害もあります。なぜでしょう?
個人的な推測ですが、
1)すべての災害について調査報告するだけの時間・費用・人材がない
2)地球科学や災害史など、専門家による調査をもってしても予想できない災害もある
3)調査報告の結果は政策に反映され、社会的影響も大きいので、費用対効果が優先される
といったことが考えられると思います。これらの考え方は、国全体を守る(全体最適)という視点で事が進みますから、個人の事情(個別最適)はあまり配慮されません。都道府県や市町村の地域防災計画で対応するか、自助・共助でなんとか…ということになります。行政は、災害発生の確からしさ(歴史的経緯や、地球規模の変動などの根拠がある)に納得性があり、専門家により被害想定がなされ、それらに対応できる対策が立案できるものしか取り組んでいないということです。
目標設定はどうでしょうか?どれだけの対策をすればよいでしょうか?行政の防災対策は、税金を使って実施する以上は無駄使いできませんし、納税者の納得性を得るためには、できるだけ詳細に正確に被害予想をして、対応策を決めていくことになります。その根拠となるのが、被害想定です。想定されたものしか対策できませんし、過不足がないかもこれらをもとに評価することになります。実際のところ、地域防災計画を調べてみると、十分な対策となっていない例が多く、それぞれの分野の当事者から不満の声を聴くことが多いようです。
災害対策本部が設置されるのは震度○以上?学校が児童生徒を帰宅させるのは?ライフライン・交通機関・銀行ATMが止まるのは?いろいろと対応の基準があります。だいたい震度5以上で対応が変わるところが多いですが、逆説的には、震度4は通常対応=最小限の対策目安、これ以下の災害はみんな(自分で)対策しててあたりまえとも言えます。
十分な対応でないと行政を批判するのではなく、防災対策にも限界があり、現実的な対応をしていかざるを得ないということを理解し、納得できない部分は自分で上乗せの対策をすべき(=自助)と心得ましょう。阪神淡路大震災以降、地域の自主防災組織による共助の重要性が叫ばれ、各地で活動が活発化している背景が、ここにも表れています。社会の複雑化やニーズの多様化が進み、今後もさらに進むなら、やがて、公助は破たんするかもしれません。自助・共助はさらに重要度が増してきます。
次回は、地震被害として考えられることを具体的に考えてみたいと思います。
防災士 中根輝彦
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