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10、アレルギーっ子の防災 第32回「防災講座−熊本地震対応から見えるアレっ子支援の課題」防災士 中根輝彦/メールマガジン114号

メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。
 みなさんもご存知の通り、4月に熊本地震が発生し、熊本・大分が大きな被害を受けました。今回は、連載講座をお休みして、別の内容でお送りします。
 現場では、まだ余震も支援活動も続いているのに時期尚早と言われるかもしれませんが、次の災害は待ってくれません。そう書いているときにも茨城で震度5弱の地震が発生しました。課題が見つかったなら、少しでも早く共有し、改善につなげることが、被害軽減につながると信じて、4月14日の発災直後からSNSで発信しつつ、アレルギー関連の情報を追いかけてきて感じていることを書きたいと思います。

○支援体制
 学会、医療センター、NPO法人、関連企業、患者会等の業界が連携しての支援態勢を作って活動したのは、過去の災害での対応と比較すると進化していると感じます。しかしながら、まだまだ万全ではなく改善の余地があります。
 自衛隊・消防のレスキュー隊・DMAT等の到着が困難な初動72時間を、地域の防災組織でどう対応するかいつも腐心している身としては、対応が遅いと感じざるを得ません。アレルギー対応を考えるとき、生存のリミットを考えるような即応性を必要とするような例は少ないと思いますが、支援の動きがあることを早い段階から知らせることによる心理的なメリットは計り知れません。
 第1報は「支援態勢が整いました!」ではなく、「支援準備に着手しました!」であって欲しい。この情報発信が遅いと、支援する意思のあるものは、業界連携の支援はないものと見切って独自ルートで動き出します。今回もそういうケースが見受けられました。SNSの中でも拡散力が抜群なTwitterを監視していても、やはり遅く感じました。自分の組織のウェブサイトに専用のページをつくってから、ここを見て!という展開は愚策です。災害対応とは呼べません。行政の公式サイトによくあるような、ホームページのトップに臨時に現れる「災害対応情報」なども見受けられませんでした。
 支援体制は、あらかじめ決められた手順で立ち上がったでしょうか?自衛隊、レスキュー隊、DMAT等、多くの災害時支援チームは、あらかじめ決められている手順に従って、活動を展開していると思いますが、アレルギー支援はこのような仕組みが整備されているのでしょうか?以下のように、災害時支援チームはいろいろな分野で整いつつあります。アレルギー支援も、これらのチームに支援をお願いするのか、自前で支援チームの整備をするのか考える時期が来ているように思います。
DMAT:災害派遣医療チーム
JMAT:日本医師会災害派遣医療チーム
DPAT:災害派遣精神医療チーム
JDA-DAT:日本栄養士会災害支援チーム
DHEAT:災害時健康危機管理支援チーム
DCAT:災害派遣福祉チーム
DMORT:災害死亡者家族支援チーム
EARTH:震災・学校支援チーム
???:災害派遣アレルギー支援チーム?

○アレルギー対応備蓄食品の支援
 一般の食料品や日用品の支援物資は、今回も物流マヒ・在庫オーバーフロー・配布作業の負荷など、これまでの災害の教訓が活かされない、被災地に負担をかける結果となりました。アレルギー対応品の支援はどうだったでしょうか?「必要なものを必要な分だけ必要な人に必要な時期に届ける」ことができたでしょうか?
 送る側は、受け取り側のニーズに一対一で紐づけて、送付の方法・届け先・引き渡し方法まで確認してから送付したでしょうか?恩返しをしたい・助けたいというあなたの思いを優先していないでしょうか?
 被災地の患者は、支援体制が立ち上がったことをもれなく知ることができたでしょうか?アレルギー対応品の要請をきちんとできたでしょうか?要請したものが届いたらその状況をフィードバックしたでしょうか?

○ネットワーク構築と訓練での検証
 災害が発生してから対応方法を相談しているようでは、支援が間に合わなくなることもあります。常日頃から業界の関係団体が連携して対応する仕組みを構築し、訓練を通じて検証・改善を繰り返していただきたいと思います。
 「訓練でできないことは発災時対応でもできない」とは、自衛隊やレスキュー隊で繰り返し言われる言葉です。都道府県や市区町村が主催する防災訓練を活用して、広域支援訓練を実施することも視野に入れたいですね。例えば、首都直下地震を想定した関東圏での訓練に、東海・上信越・東北南部から支援に入る訓練など。
 「そんなたいそうなことは、私たちには無理」
という声が聞こえてきそうですが、敢えて言わせてもらうと、
 「当事者のあなたたちがやらなくて誰がやりますか?助かるものも助からず、やっておけばよかったと後悔しますか?当事者が本気で取り組まなければ、支援者は離れます。あきらめたら負けです。」

防災士 中根輝彦

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