浜松市中区で小児科・アレルギー科を開業しております川田康介と申します。
平成20年6月に開院しましたので、ちょうど8年経過しました。無我夢中で取り組んできましたので、『もうそんなに経ったのか?』という感じです。本当にあっという間でした。当初から小児アレルギー専門のクリニックを目指して診療を行ってきました。8年間の結果としては、診療内容自体は拙いものであったかもしれませんが、支えてくれた家族・スタッフには満足しており、大変感謝しています。
さて今回は、クリニックからみた外来アレルギー診療というものについて、日頃気になるところを述べてみたいと思います。「アレルギー疾患対策基本法」が成立し、平成 27年12月から施行されておりますし、いよいよ今年度は、厚生労働省にて「アレルギー疾患対策推進協議会」が進行中であります。我々は、クリニックにおける外来アレルギー診療の役割やあり方についても考えていかなければなりません。
開業以来、総合アレルギー診療医を目指すべく、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・食物アレルギーの4つの疾患に等しく力を入れてきました。現実問題として、経営的には気管支喘息(以下、喘息)が軸になるであろうと予想していましたが、年を追うごとにその様相は変わってきました。アトピー性皮膚炎の小さなお子さんが集中して受診するようになっていったのです。赤ちゃんのアトピー性皮膚炎患者さんが増えれば、それに伴って食物アレルギーの割合も多くなっていきます。実際には、喘息とアトピー性皮膚炎の合併などもあり、簡単に患者層を分類することはできないのですが、一日診療してみて、多い時は8割くらいの患者さんに塗り薬を処方しているような気がします。どうして湿疹のある患者さんがこんなに集中するのでしょうか・・。
さて、そのようなアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの患者さんの診療は、一言でいって時間と手間がかかります。説明や指導のための人手(看護スタッフ)も必要ですし、食物経口負荷試験などに至ってはアナフィラキシーのリスクにも気をかけなければなりません。単純に診察時間で比較するとすれば、風邪の診察なら数分で済んでしまうかもしれないところが、初診のアトピー性皮膚炎では少なくとも1時間、食物経口負荷試験だと4-5時間くらいの時間を要してしまうという違いがあります。多くのアレルギー専門医は、アレルギー疾患の診療を愛しており、信念を持って取り組んでいるわけですが、一部の非専門医というか一般小児科開業医にとって、このように時間と手間のかかるアレルギー疾患はどのように位置付けられているのかやや心配になります。
ほとんどの小さなお子さんたちは、何かの症状があればまずは家の近くのクリニックを受診します。おそらくこの流れは今後も数十年は変わらないと思います。湿疹や食物アレルギーの赤ちゃんが最初に受診したクリニックでどのような対応を受けるかは、大げさに言えばその児の将来を左右するかもしれないのです。そこで学会に提言があります。学会は、なぜ一部の非専門医がアレルギー診療に熱心でないのか、地域のアレルギー患者さんがどのようなことに困っているのかについて、もう少し知るべきであり、その具体的な対策を検討していただきたいです。どうかよろしくお願い致します。
【かわだ小児科アレルギークリニック HP】
http://www.kawada-ca-clinic.com