メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。
前回に続き、津波避難について考えます。今回は津波避難の避難行動支援について掘り下げてみようと思います。
前回は、自力で避難できる人向けにあれこれと訓練方法の提案をしました。「津波てんでんこ」の教えのとおり自分の避難行動ばかり考えるのでなく、福祉の観点から支援が必要な人の避難行動支援も必要とされるようになってきていることも紹介しました。
さて、避難支援と言われて何をすればよいか具体的にイメージできますか?あの人を助けなきゃ、一緒に逃げなきゃ…と思い浮かぶ人はいますか?あの人を支援するならああしてこうして…と、支援方法が思い浮かぶでしょうか?介護業務に従事している人、家族介護をしている人、介護福祉の勉強をしている人たちなら、具体的な方法がすぐにひらめくかもしれませんね。もちろん、支援する相手によって必要となる支援内容は様々です。平常時の介護支援と同様です。避難行動も日常生活動作の対象範囲拡大ですから。相手に合わせた内容を考え、道具を工夫し、支援行動がうまく行くように関係者が訓練を重ね…。
ところで、ここでいう「関係者」とは誰でしょうね?医療や介護の専門家?外部から支援に入る救助隊や自衛隊?そうではありません。津波避難は時間勝負ですから、外部支援を待っている余裕などありません。自主防災会や町内会・自治会の役員でも間に合わなかったり支援側の人数が足りなかったり。隣近所の住民が支えあうしかありません。前述のように、要支援者の状況に合わせた支援内容が必要になりますから、常日頃から話し合っておく必要があります。支援を依頼する側は、恥ずかしいからとか申し訳ないからとか言っていないで、プライバシーに関わることでも必要なことはきちんと伝えましょう。支援する側は、要支援者のことを理解し誠実に対応する態度や介護スキルを身につけて対応力を備えることも必要でしょう。遠慮や勘違いがあっては、よりよい支援活動ができなくなります。訓練を繰り返す中で信頼関係を醸成しておく必要があります。
すでにお気づきと思いますが、年に1回の避難訓練程度では、これらの支援体制を築き上げることは困難です。必然的に、平常時の介護支援の延長としての避難行動支援とならざるを得ません。地域包括ケアシステムが進展し、在宅医療・在宅介護が増えて地域の役割が増せば、ますます避難行動支援の体制整備が重要になってきます。非常に時間のかかる取り組みです。地域包括ケアにおける地域の介護人材育成もあわせて、今すぐに始めて下さい。
平成25年に災害対策基本法の一部が改正され、市町村は要支援者の名簿作成が義務付けられました。自主防災会など関係者に情報を提供すること、対象者の命に関わる危機的な状況にあるときは、本人の同意なく関係者が情報を活用できることも盛り込まれました。これまでプライバシー保護を理由に情報開示や支援活動を拒否してきた人たちを説得しやすくなってきました。これらの状況を地域で共有し、要支援者本人や家族も含めて避難行動支援の体制作りをしましょう。情報共有は必要最低限にとどめる必要がありますから、要支援者ごとに個別の対応が必要となることはいうまでもありません。
あまり具体的ではありませんが、参考程度に事例を挙げておきましょう。避難の必要性が判断できない人には避難の声かけをする。一人では不安だったり避難場所や経路がわからない人には避難誘導や付き添いをする。身体的な理由や体力的な理由で移動が困難な人には、担架・車いす・リヤカーなど移動手段を利用して搬送する。寝たきりの人はどうしましょう?ストレッチャーを用意する?電動車いすを利用している人は?在宅酸素療法をしている人は?運動誘発性アナフィラキシーに配慮が必要な食物アレルギーの子どもは?前回の自力避難行動、今回の避難行動支援、いずれも限界があります。工夫を重ね、訓練で鍛えても、想定される津波被害から逃げ切れない場合はどうすればよいでしょうか?
次回は、行政への要望打ち上げなどを考えます。
防災士 中根輝彦
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