はじめまして。今年度アレルギー大学の講師を担当させていただくことになりました、あいち小児保健医療総合センター・アレルギー科の松井照明と申します。
今年度は、食物アレルギーの臨床(総論)を担当させていただきます。最新の事情も含めて、食物アレルギーのことを皆様に分かりやすくお伝えできるようにしたいと思っております。
食物アレルギーは世界中で増えていますが、その原因は未だにわかっていません。少しでもこの原因を明らかにすることで、食物アレルギーの予防や治療につながればという思いから私がこれまで研究してきた内容を、この機会に話題提供したいと思います。
私は2014年度まであいち小児保健医療総合センター・アレルギー科で勤務をし、多くの重症の食物アレルギーのお子さん達の診療をおこなってきました。その当時、食物アレルギーが秋冬に生まれた場合に多いことがアメリカ等から報告されていたため、通院中の食物アレルギーのお子さん達が生まれた季節を調査したところ、他国の報告と同じように秋冬出生のお子さんが多いことが確かめられました。
人間の皮膚は日光を浴びることで、ビタミンDを産生することができ、ビタミンDは体の免疫バランスを保つために重要であることが分かっています。秋冬に生まれた場合には、免疫の発達に重要な出生後早期に、日光を浴びる機会が少なくなってしまうことが、食物アレルギーの一つの原因になっている可能性があります。
私は、その後、体内のビタミンDが少ない場合に食物アレルギーを起こりやすいことをねずみのモデルで確認をし、実際にビタミンDの不足が、食物アレルギーを起こしやすくする可能性があることを確かめました。
最近は、乳幼児のビタミンD不足が思ったよりも多いこと、特に母乳栄養の場合には人工ミルクの場合と比べてビタミンD不足が起きやすいことが分かっており、アメリカでは、乳児に対してビタミンDの補充をすることが推奨されています。
残念ながら、今のところ日本では、乳児のビタミンD不足を補充するために医療機関で処方できる薬はありませんが、特に秋冬生まれの母乳栄養児の場合には、適度に日光を浴びること、市販の乳児用ビタミンDサプリメントを使用すること、人工乳を足すことなどの方法を取るとよいと考えられます。
少し難しい話だったかもしれませんが、食物アレルギーと出生季節、日光曝露、ビタミンDの関係について紹介させていただきました。
アレルギー大学を通じて、アレルギーの最新の知識を分かりやすく伝えられればと思います。よろしくお願いします。