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3、アレルギー大学講師リレートーク 第6回  武藤太一朗(愛知医科大学小児科講師)/メールマガジン141号

抗菌薬の不適切な使用を背景とした薬剤耐性菌が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあります。2015 年5月の世界保健総会において、薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プランが採択されました。現在、厚生労働省では薬剤耐性対策を展開しています。
風邪を引いたからと抗菌薬をもらいに病院に行っていませんか?ウイルス性急性上気道炎を一般的に「風邪」と表現し、ウイルス性急性胃腸炎を「胃腸風邪」と呼びます。ウイルスによる感染症に抗菌薬は効きません。抗菌薬は主に細菌に対して効果があるものであり、不適切な使い方により、その抗菌薬が将来効かなくなることがあります。小児気道感染症ガイドラインでは、抗菌薬が適応になる上気道感染症は溶連菌感染症のみであることが明記されています。
抗菌薬の使用とアレルギー性疾患の発症に関する研究が最近多く報告されています。そのうちのいくつかをご紹介いたします。
2013年にTsakokらは、生後12か月までの抗菌薬投与歴があると、アトピー性皮膚炎の発症が1.41倍に、また抗菌薬の使用エピソードが1回ごとにアトピー性皮膚炎の発症が1.07倍増える見込みになると報告しています(1)。
2017年のHirschらの報告では、生後240日以内に抗菌薬の使用と牛乳アレルギーの発症の関係について、1〜2回の投与で1.35倍に、3回以上の投与で3.65倍の見込みになるとしています。生後1000日までに何らかのアレルギー性疾患の発症する見込みは、1歳までに抗菌薬を1〜2回使用すると1.67倍、3回以上使用すると2.49倍と報告しています(2)。
2018年にMitreらは、792,130人の小児を対象に生後6か月までの抗菌薬投与と1歳時点でのアレルギー性疾患発症の相対的危険度を報告しています。これによると、生後6か月までに抗菌薬を投与された小児は131,708人(16.6%)で、気管支喘息は2.09倍、アレルギー性鼻炎は1.75倍、アナフィラキシーは1.51倍、アレルギー性結膜炎は1.42倍の発症相対危険度があるとしています(3)。
 細菌感染症の場合には抗菌薬が必要となります。しかし、「風邪に対して抗菌薬を使用する」「念のために抗菌薬を使用する」は不適切であり、耐性菌を増加させることが危惧されますが、アレルギー発症の観点からもよろしくないようです。

(1) Does early life exposure to antibiotics increase the risk of eczema? A systematic review.
Tsakok T, McKeever TM, Yeo L, Flohr C.
Br J Dermatol. 2013 Nov;169(5):983-91.
(2) Early-life antibiotic use and subsequent diagnosis of food allergy and allergic diseases.
Hirsch AG, Pollak J, Glass TA, Poulsen MN, Bailey-Davis L, Mowery J, Schwartz BS.
Clin Exp Allergy. 2017 Feb;47(2):236-244.
(3)  Association Between Use of Acid-Suppressive Medications and Antibiotics During Infancy and Allergic Diseases in Early Childhood.

Mitre E, Susi A, Kropp LE, Schwartz DJ, Gorman GH, Nylund CM.
JAMA Pediatr. 2018 Jun 4;172(6)


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2018年08月30日 16:07に投稿されたエントリーのページです。

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