« 5、第13期アレルギー大学 【愛知会場】全講座終了!! アレルギー大学修了証授与式および「アレルギーっ子のフェア」のお知らせ/メールマガジン144号 | メイン | 2、3月17日(日)に「アレルギーっ子のフェア」を開催致します♪/メールマガジン145号 »

1、新年のご挨拶 アレルギー支援ネットワーク 理事長 坂本龍雄/メールマガジン145号

新年のご挨拶

2019年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申しあげます。皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたことと、心からお慶び申しあげます。

昨年はアレルギー支援ネットワークにとってチャレンジングな年でした。「アレルギー大学」は2006年に開設されて以来、食物アレルギーの専門知識を体系的に学ぶことができる全国唯一の市民講座として着実に発展してきました。しかし、昨年度は小成に甘んじることなく「アレルギー大学」の大幅な刷新・リニューアルに挑戦し、これまでにない大きな成果を得ることができました。「アレルギー大学」は基礎講座を入り口に、初級・中級・上級と順々にレベルアップして受講する方式になっています。したがって、受講生にとっては上級講座を修了するためにかなりの費用と時間を捻出しなければなりません。そこまでして受講しようという人が現れるだろうか、正直なところ一抹の不安がありました。しかし、まったく取り越し苦労でした。私は昨年、上級講座の最後の授業である「グループディスカッション」を担当しました。およそ80名の受講者と10数名のファシリテーター(あいち小児保健医療総合センターの医師や管理栄養士、「アレルギー大学」マイスターなどにご協力いただきました)が小グループに分かれ、学んだ食物アレルギーの専門知識を地域や職場でどう活かすかについて熱心にディスカッションしていただきました。参加された皆さんの献身性には頭が下がる思いです。「アレルギー大学」が大きな社会貢献を果たしていることを信じ、企画の充実だけでなく、修了者が交流できる機会を提供するなどしてその魅力と役割を拡大させていきたいと思います。

昨年10月、愛知県はアレルギー疾患対策基本法に基づいて以下の「アレルギー疾患医療拠点病院」(以下、「拠点病院」)を指定しました。
・名古屋大学医学部附属病院
・名古屋市立大学病院
・藤田医科大学ばんたね病院
・藤田医科大学病院
・愛知医科大学病院
・あいち小児保健医療総合センター
「拠点病院」は、1)一般医療機関からの紹介等に応じ、重症及び難治性アレルギー疾患患者に対し、関係する複数の診療科が連携して診断・治療・管理を行います。2)アレルギー疾患の重症化の予防には平時からの自己管理が重要であるため、患者・家族等に対してアレルギー疾患に関する適切な情報を提供します。3)医療従事者及び、アレルギー疾患患者に日常的に接する保健師・栄養士・学校や児童福祉施設等の教職員等の知識や技能の向上を図ります。しかし、現時点ではどの「拠点病院」もこれだけの役割を果たす力量を持ち合わせていません。こうした期待と現実の深刻なギャップは愛知県に限らず全国共通の問題です。しかし、「拠点病院」の出現は微風とはいえ順風です。アレルギー支援ネットワークは決してしらけることなく、「拠点病院」とそのネットワークの整備発展のために力を尽くしたいと思います。

愛知県は「拠点病院」とともに「アレルギー疾患医療連絡協議会」(以下、「協議会」)を立ち上げました。「協議会」は、「拠点病院」を中心とした診療連携体制の在り方を検討するだけでなく、地域におけるアレルギー疾患の実情を把握するとともに、アレルギー疾患対策全般の施策に関する協議を行います。「協議会」は健康福祉部・保健医療局健康対策課に置かれ、17名の委員で構成されています。喜ばしいことですが、アレルギー支援ネットワークから私(アレルギー支援ネットワーク理事長:学識経験者)、伊藤浩明副理事長(あいち小児保健医療総合センター:「拠点病院」の関係者)、中西里映子常務理事(東海アレルギー連絡会:患者・住民の関係者)の3名が任命されました。この行政の仕組みを活用しない手はありません。しかし、「協議会」で協議を重ねるだけでは情報提供・相談活動の機会が数回追加される程度の前進しか望めません。したがって、この仕組みにエネルギーを注入する必要があります。そして、その役割は患者や住民にあり、訴えや願いを束ねて「協議会」に持ち寄ることが重要となります。アレルギー支援ネットワークもこれまで以上に期待されると思います。早速、活動のひとつひとつの分野で行政に対する要求項目を定式化させ、「協議会」を通して行政と有機的に繋がる努力を始めるつもりです。

昨年は1年の世相を表す「今年の漢字」に「災」が選ばれました。島根県西部を震源とする地震(4月)、大阪府北部を震源とする地震(6月)、西日本を中心とした豪雨(7月)、台風21号(9月)、北海道胆振東部地震(9月)などの災害が甚大な人的・物的被害をもたらしました。被災者にはアレルギー疾患に悩む子ども達も含まれています。アレルギー支援ネットワークは西日本を中心とした豪雨災害に際し、事務所に備蓄していたアレルギー対応の食料や肌着等を、広島市内に開設された「アレルギー対応物資の拠点」に緊急発送しました。広島の被災者の方々からは「患者会に所属していたことでアレルギー情報や物資が届き、本当に心強かった」という声が届いています。今回の事例は、災害に対する日頃からの備えと、患者・家族や患者会同士、そして隣近所との日常的な顔の見える関係作りがいかに大切かということを私たちに教えてくれます。現在、アレルギー支援ネットワークでは事務所の災害支援物資の備蓄・充実等のための募金活動を行っています。すでに数十万円のご寄付をいただいており、この場をお借りして御礼申しあげます。

昨年の「新年のご挨拶」で、神奈川県立こども医療センターから「牛乳アレルギーに対する急速経口免疫療法後の維持療法中に生じた重篤な有害事象」が報告されたことを受けて、「想定外の有害事象ではないことから、改めてこの治療の限界や危険性に目を向ける必要性があります」と注意喚起をいたしました。また、同じ年に米国で牛乳経口負荷試験中に死亡事故が発生し、患者・家族だけでなくアレルギー疾患診療に携わる関係者に大きな衝撃を与えました。しかし、これも想定外の有害事象ではありません。アレルギー疾患に悩む子ども達もこうした治療・診断の危険性や限界を知る権利があります。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文部科学省、2014年)にもその権利が明記されています。保護者だけでなく、子ども達からも同意を取って診断や治療、そして研究を行うための「インフォームド・アセント」という方式を整備普及することが重要だと考えています。アレルギー疾患に悩む子ども達に対する人権侵害をなくすための取り組みについて一緒に考えていきたいと思います。

末筆ながら、皆様のますますのご健勝をお祈りいたしますとともに、皆様からのさらなるご支援ご鞭撻を心からお願い申しあげます。

認定NPO法人 アレルギー支援ネットワーク 理事長
中京大学スポーツ科学部 学科長
坂本龍雄