« 5、【2024年3月31日まで配信】2023年度こどもアレルギー教室を開催します!/メールマガジン176号 | メイン | 1、2023年度第18期アレルギー大学2/25(日)研究発表・実践報告 プログラムが決定!! 受講申込受付中!!/メールマガジン177号 »

理事長挨拶/メールマガジン177号

認定NPO法人 アレルギー支援ネットワーク 理事長
北医療生活協同組合 あじま診療所 所長
反核医師の会・愛知 事務局長
坂本龍雄

<春はすぐそこまで来ています>
新年がスタートしました。厳しい寒さが続いていますが、春はすぐそこまで来ています。アレルギー支援ネットワークは、アレルギーをもつ子どもたちがのびのびと楽しく、そして、安心して暮らせる社会を実現するため今年も全力で奮闘します。

アレルギー支援ネットワークの活動は、皆さまの暖かいご理解とご支援でなりたっています。何とぞ、いっそうのご支援とご協力を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

<被災者は尊厳ある生活を営む権利があります>
能登半島地震の被災者の多くが、水道や電気といったライフラインの復旧さえもままならず、先が見通せない重苦しい生活を強いられています。そして、3週間以上たった今も、中心的な避難所ですら提供される食事の量が不足し、不衛生でプライバシーへの配慮に欠けた環境が十分に改善されていないと報じられています。胸が痛みます。

アレルギー支援ネットワークは、亡くなられた方々に哀悼の意を表し、被災者への心からのお見舞いを申しあげます。そして、復興・支援に力を注がれている皆さまに敬意と応援のメッセージをお送りします。もちろん、アレルギー支援ネットワークも被災された方々への支援活動に力を尽くす決意です。

1月9日、日本小児アレルギー学会のアレルギー疾患医療相談窓口を介して、日本栄養士会から食物アレルギー対応食品の要請がありました。その日のうちに、保管分すべて(アルファー化米1000食分やボンラクトなど)を石川県栄養士会に郵送しました。その後も、防災士の資格を持つ中西里映子さん(常務理事)が関係者と連絡を取り合っています。僅かな貢献ですが、被災者や現地の支援スタッフと繋がりが持てたことに安堵しました。一方で、食物アレルギー対応が圧倒的に不足していることを予感させる出来事でもありました。

人権先進国を自称するのであれば、災害専門省庁が創設され、災害時に備え、全国または中部圏規模の食物アレルギー対応の支援ネットワークが整備されてしかるべきです。民間の支援は行政と連携してこそ本来の力を発揮できると思います。岸田首相と馳石川県知事の被災地入りが発災から14日後と遅かったことに示されるように、災害に対する行政の貧困には怒りを禁じ得ません。

被災地の食物アレルギーをもつ子どもたちの生活実態や、それに対する支援の状況を時々に知りたいと思っています。日本小児科学会・日本アレルギー学会・日本小児アレルギー学会のホームページは、子どもたちの生活一般・健康管理に関する情報提供に関しては有益ですが、残念ながら私の知りたい情報を見つけることはできません。こうした状況を踏まえ、能登半島地震災害におけるアレルギー支援ネットワークの今後の役割を、近々開催される理事会で検討する予定です。

さて、このテーマの最後に、災害時は避難所で雑魚寝は当たり前という「常識」を見直したいと思います。国際赤十字などが1998年に定めた「人道憲章と人道支援における最低基準(スフィア基準)」(多くの国連機関、国際機関およびNGOは、スフィア基準を参考にしながら緊急人道援助活動を行っています)には、「1人あたり最低3.5m2のスペースを確保する」「トイレは20人に1つの割合、男女の割合は1対3」と書かれています。日本の「常識」との隔たりに唖然としますが、「被災者は、尊厳ある生活を営む権利があり、支援を受ける権利がある」という基本理念に基づいて最低基準が定められています。日本国憲法25条の「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」にも通じます。患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言には、「(医療は施しではなく)すべての人は、差別なしに適切な医療を受ける権利を有する」と明記されています。権利の主張が求められています。そして、被災現場であろうとなかろうと、毎朝、「病人・子ども・女性・高齢者・障害者・LGBTQ・・・・食物アレルギーを持つ子どもの災害による苦痛を減らすために、実行可能なあらゆる手段をとります」と宣言する取り組みを提唱したいと思います。

<戦争する国にしてはいけません>
昨年の新春挨拶でも話題にしましたが、ますます差し迫った課題になっています。内閣や自民党支持率が急落していますが、2022年に閣議決定された「安保3文書」に基づく敵基地攻撃能力の保有や5年以内の軍事費2倍化など、専守防衛をかなぐり捨て、わが国を戦争する国に変貌させる取り組みが着々と進められています。アレルギー支援ネットワークは、戦争も核兵器もまっぴらごめんです。「新しい戦前になるんじゃないか」というタモリさんの危惧を払拭しなければなりません。多くの仲間と力を合わせてがんばることを再度誓います。

加えて、一刻も早くロシアのウクライナ侵略とイスラエルのガザ攻撃を終わらせなければなりません。国際紛争を解決する手段は決して複雑ではありません。子どもたちを含む罪のない人々の命を奪わない。この一点で世界中の人々が団結することです。ためらいを捨て、「国連憲章と国際人権法を守れ」の声を街中に響かせようではありませんか。

<「アレルギー大学」が財政的にピンチです>
今年度もコロナ禍に対応し、インターネット「アレルギー大学」として開講されました。「アレルギー大学」は、食物アレルギーを体系的に学ぶ全国で唯一の市民講座であり、全国トップレベルの講師陣が教材を提供しています。そして、インターネットを介して全国どこからでも受講が可能になりました。「食物アレルギーアドバイザー」の資格を発行するなど創意工夫もなされています。しかし、管理栄養士をめざす学生の受講はかなり増加しましたが、全体としては受講者数において目標に遠く及びませんでした。

私は、中・上級実習の「グループディスカッション」で受講者と討論する機会を持っています。毎回、討論を通して、上級レベル(食物アレルギーアドバイザー「1級」に相当)を修得した受講生に対する期待が大きくふくらみます。たった1人でも、その受講生がいる職場や地域・家庭の食物アレルギー対応がよくなるに違いないと思えるからです。「アレルギー大学」は市民向けに学習機会を提供することが本来の目的ですが、結果として、職場や地域・家庭の食物アレルギー対応を改善するための最強のツールになっています。

外食や修学旅行などの学外授業における食物アレルギー対応はまだまだ十分ではありません。外食産業や宿泊・旅行業者にも「アレルギー大学」の受講を勧めたいと思います。学校給食法が示すように、学校給食は食物アレルギーの有無にかかわらず等しく児童生徒に与えられた権利です。全国で学校給食の無料化を求める運動が進められていますが、この運動と、給食の食物アレルギー対応の改善(代替食の提供など)は軌を一にすると考えます。学校や保育所の給食に関わる人たちにできるだけたくさん「アレルギー大学」を受講して欲しいと願います。

「アレルギー大学」の活用範囲はまだまだ広がるはずです。財政的な制約で「アレルギー大学」を畳んでしまってはなりません。昨年と同様、渾身の力を込めて「アレルギー大学」の利用拡大を訴えます。

最後に、アレルギー支援ネットワークは、最新の科学的なアレルギー情報の啓発普及や、アレルギーに悩む子どもたちに寄り添いつつ、食物アレルギー対応を充実させる大事業に取り組んで参ります。皆さまからのこれまで以上のご支援ご鞭撻を再度お願い申しあげます。

About

2024年01月30日 10:53に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「5、【2024年3月31日まで配信】2023年度こどもアレルギー教室を開催します!/メールマガジン176号」です。

次の投稿は「1、2023年度第18期アレルギー大学2/25(日)研究発表・実践報告 プログラムが決定!! 受講申込受付中!!/メールマガジン177号」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。