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☆☆☆愛知県教育委員会

「学校給食における食物アレルギー対応の手引き」解説その3☆☆☆

伊藤浩明(いとうこうめい)
(あいち小児保健医療総合センター アレルギー科)

 手引きの第2章は、食物アレルギーの給食対応に関する申請から決定までのプロセスを提案しています。基本的な流れは、「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(以下、ガイドライン)」に準拠して、「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)(以下、指導表)」を活用するもので、それを具体的に運用するための細かいポイントを規定しています。これは一見単なる事務手続きですが、その中に「手引き」が意図している重要なポイントが込められています。
 手続きは、入学前健康診断などの場で対象者のスクリーニングから始まり、指導表を含めたアレルギー対応の申請、個別面談、食物アレルギー対応委員会による決定、というガイドライン通りの流れです。重要なのは、その中で保護者、主治医、栄養担当職員、決定する管理者のそれぞれの立場を明確にしていることです。
 主治医は、学校生活管理指導表を記入して、アレルギーの診断に関する情報を提供します。医療機関としては、これは診断書に相当します。しかし、書式を見るとわかるように、対応内容の詳細について指示する立場ではありません。
 保護者は、アレルギー対応の申請書と同時に、「食物アレルギーの経過報告書」と「家庭における除去の程度」を提出します。経過報告書には、これまでに経験したアレルギー症状と検査結果(陽性・陰性・未実施)を、食品ごとに記入して、「希望する除去レベル」を伝えます。さらに、医療機関への受診状況も報告します。また、家庭の食事でどの程度の除去を行っているかを、食品ごとに記入します。
 なお、解除が進んでいたり、軽い口腔アレルギー症候群で、普通の給食を配膳してもらって、気になるものを自分で取り除いて食べれば大丈夫という子どもは、医師の書く指導表の提出は必要ない、と規定しています。
 つまり、除去のレベルは医者が具体的に指示するものでもなく、保護者も希望を伝えると同時に家庭での状況を情報として提供する立場です。実際に給食が開始された後も、家庭で解除が進んだものがあれば、保護者からの情報提供に基づいて対応内容を変えることも可能です。その都度主治医から指示を受ける必要はありません。
 この申告書をもとにして、個別面談が開かれます。学校側は、栄養教諭、養護教諭、担任、管理職(教頭や主任など)複数の立場の職員が入ります。ここで、子どもの詳しい状況を把握すると同時に、学校側の事情を説明して理解を求めます。ただし、ここは対応決定の場ではありません。
 複数の子どもの情報を集約した後に、学校毎に対応委員会を開催します。例えば、完全除去1人と加工品摂取可能な2人が在籍している場合に、3人とも完全除去対応の給食を提供する、というような判断をする場合もあります。自校式調理の場合は、ほぼここで決定できます。
 給食センターの場合は学校単位では決定できないため、学校から教育委員会に報告を出して、教育委員会レベルで決定が必要な場合もあります。こうして決定した対応計画は、教育委員会(自校式なら学校長)の名前で保護者に通知されます。
 この重厚な決定システムは、対応の決定を、保護者にも直面している栄養職員個人の責任や負担にしないためのものです。例えば、医師の診断なく多種類の除去の申し出があった場合に、学校側が組織として医療機関への受診を促すというフィードバックをすることもあるでしょう。
 給食対応の審査を組織的にしっかり行うことは、職員の理解を深めたり、不必要な除去を是正することにつながります。それは、給食業務をスムーズにするだけでなく、子どもにとって何よりも利益になることです。

 なお、一般に公開されている手引きのファイルには、こうした申請に使われる「様式」が含まれていません。実際には、各市町村教育委員会が改変して使われる可能性もありますが、この様式の中にここで解説した意図が反映されています。
様式集を含む「手引き」をご希望の方は、アレルギー支援ネットワーク事務局までお問い合わせ下さい。

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2010年04月30日 18:42に投稿されたエントリーのページです。

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