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2 「食物アレルギーの発症とその抑制」第1回/メールマガジン41号

和泉秀彦(いずみ ひでひこ)
(名古屋学芸大学管理栄養学部 管理栄養学科 准教授)

1、 タンパク質とその消化・吸収および食物アレルギーとの関係

 タンパク質“protein”の語源は、ギリシャ語の“proteios(一番重要なもの)”に由来しています。その名前が示すように、タンパク質は生体の構造と機能において最も基本的かつ不可欠な担い手であり、それなくして生命はありえません。
タンパク質は、20種類のアミノ酸がランダムにつながった一本の鎖状構造をとっていますが、そのアミノ酸の数はタンパク質によって様々で、これがタンパク質の多様性を増大させる原因になっています。この多様性がタンパク質の特性であり、酵素、ホルモン、抗体、毒素、輸送分子などとして極めて多彩な機能(“タンパク質は生きている”)を有し、また一方では、細胞の成分として不可欠な役割を担っています。
私たち人間は、多くの食品からタンパク質を摂取して、消化管においてアミノ酸に分解し、それをヒトのタンパク質に作り変えています。したがって、タンパク質の極端に少ない食事は生命維持において良くないことは明らかです。また、先に述べた20種類のアミノ酸のうち9種類は必須アミノ酸といって、体内で合成できないか、合成できても必要量を満たさないものがあります。この点からも、タンパク質は生体内で絶えず分解されてしまうので、適量のタンパク質の摂取は生命維持に重要なことがわかります。
小学校や中学校の理科で、タンパク質は消化管内でアミノ酸に分解されると学習するわけですが、すべてのタンパク質がアミノ酸に分解されるかというと、そうではありません。もし、すべてのタンパク質が消化管においてアミノ酸まで完全に分解されてしまえば、食物アレルギーという病気は起こりえないのです。つまり、タンパク質の中には、消化されやすいタンパク質とそうでないタンパク質とがあり、消化されにくいタンパク質がそのまま構造を維持したまま吸収されると、アレルギーの原因物質(アレルゲン)となるのです。また、一つの食材から多量のタンパク質を摂取するとその一部は消化されずに吸収されることもあり、この場合も食物アレルギーを引き起こす要因となります。つまり、タンパク質を摂取する場合には、多種類の食材から少量ずつ摂取したほうが食物アレルギーになりにくいといえるかもしれません。

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2010年04月30日 18:46に投稿されたエントリーのページです。

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