「日本小児アレルギー学会」
独立行政法人国立成育医療研究センター アレルギー科
二村昌樹
12月4日、5日の週末に横浜で開催された日本小児アレルギー学会に参加しました。
その名の通り、小児科でアレルギーを専門とする医師が多く参加している学会ですが、小児科以外の医師も、医師以外の職種の人も多く参加し発表している会です。今年も盛況で2日間で1600人ほどが参加したそうです。
プログラムを見てみると今注目されている(流行っているといってもいいかもしれません)経口減感作療法についての発表が多く、その会場では立ち見が出るほどでした。
今回学会の大会長である先生は経口減感作療法の第一人者であったため、会長講演もあふれんばかりの盛況ぶりでした。先生はご自身もアレルギーの子をもつ親で、その体験も踏まえての約1時間の講演でした。専門性の高い(難しい)話もありましたが、実体験を笑いも少し入れながら紹介されていたのであっという間に終わってしまったという印象でした。
学会会場には珍しく(?)、誰も居眠りをしている人はいませんでした。私も人前でお話をする場面がときどきありますが、聴衆を眠らせない話し方をちょっと見習いたいです。(^_^;)
さて経口減感作療法についてすこしお話をしましょう。
経口減感作療法というのは、アレルギー症状が起こる食物を食べて治すというものです。とはいっても普通に食べたのでは当然さまざまなアレルギー症状が起こってしまいます。そこで症状が起こらない程度の極少量から食べてその量を増やしていきます。詳細は省きますが、この方法での治療効果が期待できることは世界中で確認されています。それではどうして食べて治るのか、どのような方法で食べるのがよいのかということになりますが、実はまだよくわかっていないのが現状です。
そして経口減感作療法は、現段階ではまだ食物アレルギーの標準的治療とは言えません(遠くない将来には、標準的な治療のひとつになるでしょう)。ですから明日かかりつけの病院に行っても経口減感作療法が受けられるというわけではありません。
日本でも多くのアレルギーの専門施設で、経口減感作療法は行われています。しかし、その方法は施設ごとに異なるため、今回の学会のような場で意見交換をしながらよりよい方法が検討されています。治療をうけるに当たって注意も必要で、経口減感作療法はアナフィラキシーなどを起こす危険性もあるため、必ず医師の指導のもとで行わなければいけません。
また食物アレルギーの患者さん全員が対象になるわけではありません。たとえば赤ちゃんの場合には、経口減感作療法をしなくても自然に食べられるようになる可能性も高いため、あえて危険性を伴う方法を選択することはしません。しかし赤ちゃんの食物アレルギーにも以前のように「加工品くらいは摂取できる人もすべて完全除去する」という考えから、「食べられる分は食べましょう」という対応に変化しています。これも食べて治すという経口減感作療法の考えと一致しています。
以前も書きましたが、経口減感作療法の分野でも有効な治療法を検討する臨床研究が全国の施設で行われています。昨年1年間だけでも国内外からたくさんの報告がありました。学会では研究結果がいち早く報告されるため、今回もそれが目当ての参加者が多かったと思います。
こういった報告は専門家以外の方には内容が難しく理解しにくいのですが、一般の方を対象に日本で開催されている学会では「市民講座」が開催されています(今回もありました)。各分野の著名な専門家が最新の情報をわかりやすく話をしてくれるので、結構評判もいいようです。
ちなみに日本小児アレルギー学会は、今年は福岡(2011年10月28日-30日)で再来年は大阪で開催予定ですので、興味のある方はぜひ参加してみてください。