「日本アレルギー学会の参加報告」
独立行政法人国立成育医療研究センター アレルギー科
二村昌樹先生
震災に伴い多くの学会で中止が相次ぐ中、5月14日、15日に千葉の幕張メッセで「日本アレルギー学会春季臨床大会」が開催されました。幕張は液状化のニュースがあった東京ディズニーランドのそばにあります。すでにディズニーランドは営業を再開していたので東京からの電車には多くの家族が乗り合わせていました。子どもたちの楽しそうな顔を横目に学会に参加しましたのでその報告をさせていただきます。
学会ではいくつかの会場でさまざまな講演や発表がされており、アレルギー支援ネットワークのメンバーも発表をしていました。今回も他の学会と同様に慣例通り会長講演が企画されていました。しかし直前にプログラムが変更になり会長講演の時間に緊急企画「震災時におけるアレルギー診療の問題」が実施されていました。一番大きな会場を使って開催されましたが、非常に盛況で立ち見が出るほど多くの聴講者がいました。
内容は、被災地の内科医と小児科医がそれぞれ現在抱えるアレルギーに関する医療問題を報告し、それに対する医療支援活動を別の医師が報告するというものでした。被災地からの報告は写真も交えた発表で、報道からは知りえない現場の“生”の声を聞くことができ、すでに震災から2ヶ月以上たっていましたが医師の大変さが伝わってきました。特にこども病院の先生は、電話も電気もない状況での診療や食物アレルギー患者さんへの支援をどのようにしていったかを発表され、中でもアレルギー支援ネットワークを中心としたNPO法人や患者団体の活動を賞賛されていました。
また被災地のアレルギー児への支援ネットワークを目的にしたメーリングリストも紹介されていました。これには私自身も参加しているのですが、最近このメーリングリストで自宅や避難所で非日常的な生活をされているアレルギー児のためにパンフレットが作成されています。日本小児アレルギー学会のHPからダウンロードできますが、このパンフレットは災害時の対応として単にアレルギー児やその家族向けのものだけではなく、周囲にいる方々や行政の方にもこれだけは知っておいてほしいという内容がまとめられています。みなさんもよろしければ一度ご覧ください。
http://www.iscb.net/JSPACI/oshirase/110517.html
学会会場では千葉県の名産品も販売されていたため、学会終了後に銚子のぬれ煎餅を購入し家族と一緒に食べました。あとで煎餅工場も被災したことを知りましたが、私が煎餅を購入したことも復興の一助となっていれば…と思います。