「湿疹が食物アレルギーの原因?」
独立行政法人国立成育医療研究センター アレルギー科
二村昌樹先生
最近は食の安全性に関するニュースをよく耳にします。夏に向けてさらに食中毒には注意しなくてはいけない季節ですね。暑い季節にはあっさりと食事を済ませたいところですが、特に生ものの扱いには十分気をつけてください。食中毒対策はその予防が第一です。
食物アレルギーにも効果的な予防法があればいいのですが、最近これに関して注目されている「湿疹が食物アレルギーの原因のひとつである」という説に関して書かせていただきます。
食物アレルギーの症状のひとつが湿疹である(食物アレルギーが湿疹の原因)ということはご存知の方も多いと思います。
しかし、この説は原因と結果が逆になっています。
食物アレルギーは、ある食物を食べるとアレルギー症状を引き起こす病気です。特に食べてすぐ起こる「即時型アレルギー」では、体の中で主にその食べ物に対するIgE抗体(牛乳アレルギーの場合には牛乳に対するIgE抗体)が他の細胞と一緒に働いて症状がでます。このIgE抗体が体の中で作られることを「感作(かんさ)」といいます。
感作されると食物アレルギーになる可能性が高くなるので、感作しないようにするのが予防法の一つとして重要です。ではどのようにすれば感作を防ぐことができるのでしょうか。
感作するためには、体が食物と接する機会が必要です。当然食べるということもその機会の一つとなります。
最近の研究では、幼少期に食べることで感作される以外に、湿疹がある皮膚に付着することからも感作されるということが分かってきました。湿疹があると皮膚のバリアが不十分になって、そこから食物の一部が体内に侵入し感作されるというものです。もちろん食べたものや湿疹に付着したものがすべてに対してアレルギーになってしまう訳ではありませんし、どのような状況で食べたり付着するとアレルギーになるのか詳しくは分かっていません。しかし、実際に赤ちゃんの頃に湿疹があった人と湿疹がなかった人では、湿疹があった人の方が食物アレルギーになる確率が高かったという調査結果も出ています。
果たしてどれくらいの予防効果があるのかわかりませんが、少なくとも乳児湿疹は放置せずに早めに治した方がよさそうですね。