このシリーズで目指すものは、“自分で選定する判断力を持っていただくこと”です。
そのために最初に「アトピー性皮膚炎の方にとっての『シャンプーの役割』」を定義した上で「界面活性剤の基礎知識」→「シャンプーをとりまく環境の変化」→「界面活性剤の変遷」と選定の基礎となることに重点を置いてきました。そして、10月からは、低刺激性、天然系、無添加、アミノ酸など選定に関わるキーワードの意味するところを検証して行きます。
ただ、アトピー性皮膚炎の方にとっては、それ以前に配慮すべき選定上の原理・原則があるように思いますので、今回は「アトピーの方の選び方」として整理してみました。
★判断基準はご自分の肌
安全・安心から見て万能(絶対的)なものはありません。安全なものとは、あなたの髪、頭皮、お肌に合ったものと考えるのがよいと思います。一般的な低刺激性、低アレルギー性は1つの指標にはなりますが、あくまでもご自身が基準です。ただ、低刺激性、低アレルギー性のものは比較的多くの方に合う確率が高いとは言えます。
★プラス思考で臨む
今は低刺激性、低アレルギー性で使用感のよいものが、いろいろ開発されています。
「アトピーだからあれもダメこれもダメ」「ギシギシしたり、泡立ちが悪くてもしょうがない」など悲観的にならず、選定を楽しむくらいの気持ちを持ちましょう。
★変えるときは慎重に
広い範囲で情報収集して候補をしぼった上で「お試しサイズ」で確認(特に慎重にする時は部分的に使ってみるのも一案)します。約3週間続けば一安心です。さらに続けて問題がなければご自分の“お気に入り”にします。これを決めて置いて新しいシャンプーに出合ったときの比較の基準とします。試してみて基準品よりマイナスと思われるときは直ぐ使用を中止します。プラス面よりマイナス面を重視します。
★正しい基礎知識を持つ
アトピー性皮膚炎の理解も含め、シャンプー素材などにつき正しい知識を持つように心がけましょう。ある主張を持った方は、皆自分が「正しい」と考えている訳ですから、その見極めが難しいです。ここでは「正しいとは、その分野の専門家の主流の考えかた」を指しています。来年の2月号のテーマ“情報の質から選ぶ”では正しい基礎知識を得るのに向いた「お勧めの本」を3冊紹介する予定です。
★総合的に冷静に判断する
探す段階では特定の項目、製品だけにこだわらず、広い範囲で情報を収集します。
使った時の判断は、使用方法、その時の体調、ストレスの有無、気候(特に季節の変わり目)などを含めて、総合的にかつ冷静に評価します。
アトピー性皮膚炎の定義が『増悪、寛解(悪くなったりよくなったりの意)を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、・・・』となっていて変化はつきもので、その中で判断する難しさがあります。
また、個人差も大きいので、自分の結果が必ずしも他の方に適用できるとは限らないことを承知しておきましょう。逆の場合も同じです。
★自分の好みで決める
以上のように考えてくると技術的に確かなものしか選定できないように感じますが、そうでもありません。自分の好み(理屈では説明できないことであっても)も選定上の重要な因子とします。自分の好み=ストレスがないということでもありますので、大いに活用しましょう。石けんが好きで現在問題がないならそれでよいと思います。ただ、それによって他の方の選択肢を狭めてしまわないようにしましょう。