昨年5月から始まったこのシリーズは今月号が最終回となります。長い間おつきあいいただきまして有難うございます。世の中には情報が溢れていますのでその中からご自分にベストなものを選ぶにはそれなりの知識も必要です。ここでは「ご自分で選ぶ力を身につけていただくこと」を念頭において進めてきました。少しでもお役に立てれば幸いです。
★安全なものとは
最初に気をつけるべきことは不安を煽る情報(不安商法)に惑わされないことです。
まず、“安全なものとはあなたに合ったもの”と考えてください。
安全にしても使用感の好みにしても、あなたがすべての判断基準です。ただ、端からテストする訳には行きませんので効率よく進める必要があります。このためにピラミッドの形をイメージし最初に基本的なものの考え方をご理解いただいた上で徐々に具体的なノウハウを駆使して絞って行きます。このシリーズでもこの順序で話を進めてきました。
★シャンプーの役割
アトピー性皮膚炎の方にとってのシャンプーの果たすべき役割は「“洗う”を通してQOL(生活の質)の向上に役立つこと」と定義できると思います。
そのためには「肌に優しい」ことは必須条件であり、肌や髪に刺激がなく、過度な脱脂を抑制した洗浄力など高い安全性が求められます。さらにきめ細かく豊かな泡立ち、洗浄後の肌や毛髪の仕上がり感など使用感のよさも大切です。
★界面活性剤の基礎知識
シャンプーは洗うことが役割ですから洗浄成分が主成分で界面活性剤が使用されます。
安全性にしても使用感にしても界面活性剤の特性がシャンプーに大きく影響します。
界面活性剤と聞いただけで不安感を持つ方もおられますが、シャンプーはじめ化粧品に使用される界面活性剤は安全で低刺激なものが選定されていますので問題ありません。しかし、低刺激性の程度や使用感は差がありますので必要に応じて使い分けします。
界面活性剤の機能:イオンの形でアニオン(陰イオン)、カチオン(陽イオン)、両性、ノニオンの界面活性剤に分類されます。これを知ると洗浄の原理、コンディショニング効果(髪のまとまりのよさ)などを理解しやすくなります。詳しくは6月号に載せました。
界面活性剤の変遷:シャンプーの主剤に使用されるアニオン界面活性剤の中では、使用感または刺激性の改善が進んでいます。 紀元前から使用されている石けん系→高級アルコール系(1950年代後半〜、低刺激改善品は1960年代後〜)→アミノ酸系(1980年代前半から)という大きな流れがあります。1980年代後半からは洗浄力とコンディショニング効果を兼ね備えた両性界面活性剤という新しいタイプのものが開発されアニオン界面活性剤と併用されるようになってきました。詳しくは8月号に載せました。
界面活性剤の低刺激性:刺激性には色々な指標があるのですが、シャンプーに使用されるアニオン界面活性剤の中では、低刺激性の順でアミノ酸系(メチルタウリンも含む)≧ラウリルリン酸系≧石けん系≫高級アルコール系(ラウレス硫酸Na)≫高級アルコール系(ラウリル硫酸Na)となります。刺激性があるものは総じて洗浄力が強く価格も安くなる傾向にあるので目的に応じて選択されます。アトピー性皮膚炎の方には低刺激性のものがよく特にアミノ酸系が適しています。10月号の「低刺激性」に載せました。
★シャンプーをとりまく環境の変化
使用頻度:1950年代は週1回程度が、今では毎日使用となり肌への負荷も増加。
技術の進歩:界面活性剤などの素材・配合技術の進歩で低刺激性、使用感が向上。
情報開示:全成分表示制度により素材の情報が得やすくなりました。
ITの普及:情報量が飛躍的に増えたものの情報の質は玉石混交で見極めが大切。
選ぶ楽しさが増える一方、それなりの知識も必要とされてきました。「環境の変化」については7月号に、「情報の質から選ぶ」ノウハウについては2月号に載せました。
★アトピー性皮膚炎の方の選び方
「判断基準はご自分の肌」、「プラス思考で望む」などアトピー性皮膚炎の方がシャンプー選びをするときに特に知っておいていただきたい原理原則についてまとめました。詳しくは9月号に載せました。
★キーワードの検証
宣伝などに使用されるキーワードをどのように理解したらよいか検証しました。
低刺激性:シャンプーは界面活性剤が主成分ですから界面活性剤の低刺激性
がシャンプーの低刺激性に大きく影響します。詳しくは10月号に載せまし
た。
天然系:多くの方が天然、自然に安心感を持ち、化学物質に不安感をお持ち
ですが、天然物であれ合成物であれ“安全なものは安全”ですし、多少問
題なものはどちらにもあります。天然物の活用法については4つのケース
がありますので何をさして“天然系”としているか、そのことが安全とどう関わっているかを見極める必要があります。詳しくは11月号に載せました。
無添加:代表的なものは旧表示指定成分無添加です。旧表示指定成分は過去に事例があったものを全て指定成分としたために使用頻度の多いものほど指定されやすく使用頻度の少ないものは見落された可能性があります。従って無添加だからといって安全性が高いとは言い切れません。無添加のなかには技術的にあまり意味のないものもあります。詳しくは12月号に載せました。
無香料:汎用シャンプーには香料が欠かせない理由を知っておきましょう。無香料ではご自分の体質・好みに合わせて楽しむこともできます。以下、1月号参照
アミノ酸:アミノ酸系界面活性剤を使用したものがオーソドックスですが、アミノ酸を添加したもの、アミノ酸石けんもアミノ酸シャンプーと言われることもあります。
弱酸性:体によい1つの条件ですが、決定的なものではありません。
6月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/05/_54_4.html
7月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/07/_55_2.html
8月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/08/_456.html
9月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/09/_557.html
10月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/09/_658.html
11月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/10/_759.html
12月号 http://www.alle-net.com/mm/2011/12/_60_2.html
1月号 http://www.alle-net.com/mm/2012/01/_60_13.html
2月号 http://www.alle-net.com/mm/2012/01/_62_2.html