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1 「気管支喘息とアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎」第三回 〜気管支喘息とは・・・〜 てらだアレルギーこどもクリニック院長 寺田 明彦/メールマガジン63号

喘息(ぜんそく)とは、文字通り「息を喘ぐ(あえぐ)」状態になる病気です。私が初めて赴任した静岡済生会病院で当直をしていたとき、夜中に喘息発作で苦しくなった子供が多く受診しました。
またある日、当直をしているとき40代の男性新聞記者の方が、夜中に喘息発作のため呼吸不全となり救急車で救急外来に運ばれてきました。緊急事態です。内科の先生ばかりではなく、研修医、さらに小児科の私も含めた救急外来当番医が総員で蘇生や処置にあたりましたが、残念ながら命を救うことができませんでした。その時、患者さんに人工呼吸をしたのですが、酸素のバッグを一所懸命揉んでも胸が動かず、肺を膨らませて有効な呼吸をさせてあげられませんでした。さらに、気管からとてもドロドロした痰が出てきました。粘液栓ができてしまったのです。つまり、喘息の病態は気管支の周囲を取り巻く平滑筋という筋肉が縮んで気管支が狭くなるばかりではなく、粘液栓が気管支の内側に詰まってしまった「窒息状態」になることを思い知らされました。
 前回の「長引く咳の原因」でもっとも多かったのが気管支喘息でした。その診断のポイントとなるのが問診と診察所見です。問診で私が重視するのは以下の点です。これはGINA(ジーナ)といって世界保健機関(WHO)から出されている国際的な喘息治療ガイドラインに書かれていることです。
1)発作性の喘鳴(単発性または反復性)の経験があるか?
2)夜間に強い咳が認められるか?
3)運動後に咳または喘鳴が認められるか?
4)吸入アレルゲン、大気汚染・タバコなど刺激物への暴露後に咳、喘鳴または胸苦しさが発生するか?
5)風邪を引いたときに“下気道症状”が現れるか、あるいは回復に10日以上要するか?
6)症状は適切な喘息治療によって改善するか?
 特に1)、2)、3)が重要です。
症状によって喘息が強く疑われた場合は、アレルギー体質があるかどうかを調べます。アレルギー体質とは、本来は体にとってさほど害のないものに対して、体が過敏に反応してしまい、それを取り除こうと過剰に反応することを指します。例えば、スギ花粉症の患者さんは、スギ花粉が鼻につくとくしゃみや鼻汁で花粉を排除しようとします。さらに奥に入らないように鼻の粘膜が腫れてきます。喘息では、ダニやほこりなどが気管支に入り込み、気管支平滑筋が収縮し痰が増え、気道の粘膜である壁が腫れてしまいます。そして呼吸が苦しくなり咳が出てくるのです。ダニ、ほこり(ハウスダスト)、ペットのフケ、カビや花粉などアレルギーの原因物質を抗原(アレルゲン)と呼びます。そしてこれらが気道に入りこみ、体の中に吸収されてから、免疫を担っているリンパ球を刺激してしまいアレルギー抗体がたくさん作られて血液の中に流れていきます。これがIgE抗体です。
IgE抗体の存在は、1966年日本人である石坂公成先生、照子先生ご夫妻がジョンズホプキンス大学(アメリカ)においてブタクサ花粉症患者の血液からIgEを取り出し発見しました。IgEの"E"というアルファベットはこの抗体が紅斑(こうはん:英語でErythema)を起すということに由来しているそうです。話は少し外れますが、血液の中にある抗体は、IgEのほかにIgA、IgG、IgMそしてIgDが見つかっています。IgA、IgG、IgMは主に感染症の病原体(ウイルスや細菌)に対して体を守る「防御抗体」です。これを液性免疫と言います。
IgE抗体は現在では簡単に血液検査で見つけることができます。ダニやほこりに対するIgEが高くなる人が気管支喘息になる危険性が高くなります。小児の喘息では80-90%がこのIgE抗体陽性となる「アレルギー型喘息」です。しかし、最近ではIgEが陰性の「非アレルギー型喘息」が問題となっています。なぜなら0−3才の乳幼児にこの非アレルギー型喘息が多く、まだまだ入院するようなひどい喘息発作を起こす子供が多いためです。
繰り返しになりますが、喘息の診断は、(1)問診 (2)アレルギー既往歴 (3)症状と所見 (4)IgE抗体の証明と他の長引く病気の鑑別 (5)胸部レントゲンや副鼻腔レントゲン、(6)喘息治療薬の効果などで総合的に判断します。中でも私が最も重要だと思っているのは「聴診による呼気性喘鳴の聴取」です。息を吐くときに聞こえるぜーぜー、ヒューヒューした音が気管支拡張薬によって聞こえなくなることが最も信頼性の高い診断根拠だと思います。呼気性喘鳴の聴取をよりよくするため、これまでいろいろな方法を試してきました。ストローで飲み物を飲むことができるのは1歳過ぎてからですが、逆に息を吐くことが理解できるのは3才ごろだと思います。子供の口の前にテイッシュをかざして「これをフーフーしてごらん」と言ってみてください。すると子供はフーフーとテイッシュが揺れるように息を吹きかけてくれます。この時、胸の音を聴診器で聞くと呼気がよく聞こえます。聴診器でなくても、胸に耳を当ててもよいでしょう。一度お試しください。
次回は、喘息に治療薬についてお話しします。

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2012年02月29日 23:28に投稿されたエントリーのページです。

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