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1 「気管支喘息とアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎」第四回 〜喘息の治療・・・〜 てらだアレルギーこどもクリニック院長 寺田 明彦/メールマガジン64号

喘息の治療には「三本の柱」があります。
すなわち、
(1)環境整備
(2)体力づくり
(3)薬物療法
です。
中でも発作に対する治療は薬物療法が中心です。私が1996年から5年間勤務した旧・国立療養所三重病院(現・国立病院機構 三重病院)では、難治性喘息の患者さんが40名ほど長期入院による喘息治療を受けながら近くにある養護学校に通学する療養生活を送っていました。ここでの治療はアレルゲンであるダニやペットの影響を取り除くことで、これによりアレルゲン暴露が少なくなります。また毎日規則正しい生活やランニング、水かぶり、冷水摩擦、エアロビクスなどの鍛錬療法は、心身をともに鍛えて喘息に打ち勝つ気持ちを養います。さらに、小発作(喘鳴はあるが苦しくはない程度)なら当時は発作の治療としては「害」とまで言われていた気管支拡張薬の吸入を行わずに「自己コントロール」を身に着けて、腹式呼吸、水分摂取、排痰を実践して治す方法を身に着けることでした。また、当時は「喘息=心身症」という概念が根強く残っている時期でしたので、親元を離れ自立心を養うことも大事だと考えられていました。
ところが、1990年の後半には、喘息が気道の慢性炎症であるという病態(病気の性質)が解明されてきたことで、発作を起こさない予防的治療として炎症を抑える薬として「吸入ステロイド薬」が注目され、成人では著効することがわかってきました。そして小児においても同様に喘息は気道の炎症だろうと考えられるようになり、その臨床治験を行うことになりました。するとどうでしょう、長期入院療法中でも時々夜間発作を起こしていた子供や運動すると発作が出ていた(運動誘発喘息と言います)子供たちが、まったくと言っていいほど発作を起こさなくなったのです。そして、特にアトピー性皮膚炎では「ステロイド」と聞くと「怖い薬」というイメージが先行していた時期ですが、吸入ステロイド薬による副作用は全くありませんでした(注意すべき副作用を後で述べます)。これが今の「フルタイドデイスカス」でした。それまでも「アルデシン、ベコタイド」と言った定量噴霧式製剤(俗にエアー剤)がありましたが、吸い方が悪いためかあまり効果がある印象がありませんでした。しかし、このパウダー型製剤(乳糖に薬がまぶしてあるタイプ=キャリア型と薬そのものが細かくしてある分散型があります)はよく効きました。この時から、喘息の治療である「三本の柱」のバランスが崩れ始めました。吸入ステロイド薬により発作を起こさないようにすれば、つらい発作によって救急外来を含め医療機関を受診する回数が減り、入院することもなくなり、患者さんや両親などの家族の生活の質(QOL)が向上しました。2000年に入ると、吸入ステロイド薬が普及し始め長期入院が必要な患者さんは激減しました。
この吸入ステロイド薬に続き、抗ロイコトリエン受容体拮抗薬が2000年から使用されることが多くなりました。さらに、これは成人領域ですが抗IgE抗体を抑制する抗体を注射で使える時代になってきました。これから、喘息の病態にあった治療薬の選択がますます有効性を発揮する時代がやってきます。
次回は、最近の喘息の治療である「三本の柱」についてそれぞれを解説します。


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2012年03月31日 20:46に投稿されたエントリーのページです。

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