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1 「気管支喘息とアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎」第五回 〜薬物療法〜 てらだアレルギーこどもクリニック院長 寺田 明彦/メールマガジン65号

喘息の治療薬として、まず喘息発作を和らげる「発作止め」についてお話しします。
喘息は気道の炎症により病気を起こしていますが、過敏になった気道が狭くなるため苦しくなります。まず、気管支をぐるりと取り囲む気管支平滑筋が収縮するために狭くなります。これを弛緩(広げる)薬が気管支拡張薬です。この気管支拡張薬には交感神経を刺激する「β2刺激薬」と平滑筋細胞内に働く「キサンチン製剤」があります。そのうち、β2刺激薬が最も安全で効果が高い薬剤です。内服、吸入、点滴、そして貼付薬があります。
もっとも即効性があるのは吸入薬です。プルカテロール(メプチン)には剤型が豊富で、吸入液(ユニット)、エアー剤(エアー、キッドエアー、そしてパウダー剤(クリックヘラ―)があります。サルブタモール硫酸塩(ベネトリン、サルタノール、アイロミール)は、吸入液とエアー剤があります。またイソプレナリン塩酸塩(アスプール)は入院するような発作の時に酸素吸入と併用して持続吸入療法がおこなわれ場合に使用されています。
内服薬としては、クレンブテロール(スピロベント)、テルブタリン(ブリカニール)、ツロブテロール(ホクナリン、ベラチン)、プロカテロール(メプチン)などがあります。剤型としては錠剤、顆粒・ドライシロップ、シロップ剤などがあります。
日本で開発された貼付薬は特に内服や吸入が困難な方には便利です。ツロブテロール(ホクナリンテープ、ツロブテロールテープなど)があります。
注射薬はテルブタリン(ブリカニール)、イソプレナリン塩酸塩(プロタノール)がありますが使用頻度は限られています。
ツロブテロール(ホクナリンテープ、ツロブテロールテープなど)については、「咳止めシール」などと呼ばれています。しかし、咳の原因が上気道炎、つまり風邪などの場合は効果がありません。咳の原因が気管支喘息のように気管支平滑筋が収縮することでおこっている場合は気管支拡張剤であるツロブテロール貼付薬が効きます。患者さんは便利さもあって咳が出ると自分で判断しテープの貼付を続けているときがありますが、効かない場合は肺炎や副鼻腔炎などのこともありますので早めに医師の診察を受けて下さい。また、ツロブテロール貼付薬は12時間以上作用する「長時間作用性β2刺激薬」と呼ばれています。これはサルメテロールキシナホ酸塩(セレベント)と同様、単独での使用を長期間続けることはお勧めできません。からなず、吸入ステロイド薬などの抗炎症薬と併用することが勧められています。理由として、気管支拡張薬だけではかえって気道の過敏性を悪化させてしまい、喘息を悪くすることがあるためです。
キサンチン製剤(テオフィリン徐放剤、アミノフィリン注射薬)は細胞内のカルシウム濃度を高めて平滑筋を拡げる薬です。急性期にはアミノフィリン点滴静注が行われます。しかし、副作用の出やすい薬であるため最近では入院した場合に使用することがほとんどとなりました。小児気管支喘息治療・管理ガイドラインでも2000年は中発作から外来での点滴治療として記載されていましたが、その後は徐々に喘息治療に慣れた医師(主に専門医)の管理のもとで実施されるべき治療法となりました。さらにガイドライン2012では入院を考慮するような場合に病院にて行いうる治療法となっています。私自身は、2005年のガイドラインを契機に外来さらに入院でのアミノフィリン投与を中止しました。その代わりステロイド点滴と吸入β2刺激薬の反復吸入を行うことで治療期間の延長をすることなく治療できています。
次に、喘息発作にてβ2刺激薬吸入を反復しても改善しない場合は、ステロイド薬を全身投与します。主に点滴で投与しますが、内服を行う先生もおられます。どちらの効果も差がないと言われていますが、ステロイド本来の抗炎症作用が現れるのは時間がかかります。どうも点滴で使った方が早く効くような印象がありますし発作時は一緒に補液して水分、塩分、当分も補うことができます。また内服は吸収されるのに時間がかかります。点滴による全身性ステロイド薬にはヒドロコルチゾン(ソルコーテフなど)、プレドニゾロン(プレドニンなど)、メチルプレドニゾロン(ソルメドロールなど)が用いられます。内服にはプレドニゾロン(プレドニン)、リンデロン(ベタメサゾン)、デカドロン(デキサメサゾン)などがあります。
ところで、家庭での発作時治療はどうしたらいいのでしょうか?まず、発作かどうかの見分けが肝心です。発作とは、どういう状態のことを言うのでしょうか?外来でときどき「ゼーゼーしたけれど発作ではなかった」と保護者の方がおっしゃることがあります。そういう場合に「どうなった発作でしょうかね」と聞いてみます。すると保護者の方は「発作」とは喘息によって「苦しい状態」であると思っているようです。咳き込んで苦しいとか吐くと厄介ですね。でも、夜、咳をしていても眠られている場合は発作ではないのでしょうか?また昼間は症状がなく医療機関を受診してもなかなか喘息という診断がされていないケースもあります。咳き込んでいる時に聴診をしたり、またティッシュを使って息をフーフーしてもらったり、さら肺機能を測定し客観的に発作をとらえることも必要です。
あまり症状を訴えない子供には、ピークフローメーターで呼吸機能を自己測定してもらいます。このピークフローメーターで呼吸機能をモニターしてみると、朝低下していることがよくあります。そして「苦しい発作」の手前の状態を知ることができます。
私は、「発作」とは気道の収縮によって気流制限が起こっている状態、つまり空気の通りが悪くなっている状態の全てだと思います。そして、気流制限は胸苦しさから始まり、胸が重い感じから始まり、こんこんという咳からぜこぜこという痰がらみの咳となり、さらにヒューヒュー、ゼーゼーして喘鳴と進展してゆくものだと思います。また、喘息のときは、まず息が吐きにくい状態が先に来て、そのあとから吸いにくい状態となってきます。したがって「息が苦しい」と言い始めたころには、すでに喘息の発作によって吸気が制限されてきた証拠だと思います。したがって気道が収縮してから案外時間が経っていることが多いのです。
こういったことから「軽い咳」程度でも自宅では用心していただきたいと思います。そして手元に薬があれば早めのβ2刺激薬の吸入、内服、あるいは貼付をお勧めしています。この順番で効果が早いので覚えてください。咳などの症状が改善すればそれは喘息の咳です。なぜなら風邪の咳には気管支拡張薬は効果がないからです。

次回は、吸入ステロイド薬についてお話しします。

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2012年04月30日 22:13に投稿されたエントリーのページです。

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