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1 「気管支喘息とアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎」第九回 〜環境整備:アレルゲン対策、受動喫煙防止〜 てらだアレルギーこどもクリニック院長 寺田 明彦/メールマガジン69号

気管支喘息は、大きく分けて2つのタイプに分けられます。ダニ、ほこり、花粉、ペット、かびなどのIgEが高くなるアレルギー素因(アトピーと呼びます)があるタイプ「アレルギー型喘息またはアトピー型喘息」と言います。一方、IgE抗体を産生せず陰性でウイルスや細菌などの感染やストレスが原因で起こるタイプを「非アレルギー型喘息または非アトピー型喘息」と言います。小児の気管支喘息では、9割が「アレルギー型喘息」です。

(1)アレルゲン対策

喘息の発症と悪化を招く原因は室内のアレルゲンです。中でもほこり、塵(チリ)ダニ、真菌類(カ
ビ)、犬や猫などペットのフケがあります。人間の生活が豊かになり、冬は暖房、夏は冷房と快適な居住空間で生活しています。塵ダニの至適発育条件は温度25〜35℃、相対湿度75%前後です。多湿の日本では、6月〜7月にかけてかなり塵ダニが増加します。この室内塵ダニは、喘息に関与する主要なアレルゲンです。ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニなど塵ダニ類の感作によって気道過敏性が悪化し喘息を発症することがわかっています。抗原であるホコリの量1g当たりダニの量(正確にはダニの体の成分)が2μgを超えると感作が成立しIgE抗体が作られます。そしてダニの量が10μgを超えると喘息を発症するといわれています。従って、このダニを減らすことこそ最も大切な治療になり予防になるのです。また塵ダニはその糞や死がいが抗原となりうるため、成育を抑制し駆逐するだけではなく掃除機でこまめな吸引除去の徹底が必要です。
また、毛のあるペットはそのものがアレルゲンとなるばかりではなく、塵ダニのえさになります。犬やネコを室内で飼育すると塵ダニが多くなります。従って、毛のあるペットの飼育はよくありません。ときどき、ペットを飼いたいのでIgE検査をしてほしいと言われて検査をする場合があります。しかし、たとえ動物に対するIgEが陰性でも、塵ダニが増えることがあるため毛のあるペットの室内での飼育はお勧めしません。

(2)室内環境整備のポイント

ダニなどのアレルゲンを減らす工夫により気道の過敏性を悪化させずに済めば、とても効果的な治療と言えます。室内環境整備として一番大事な場所は寝室です。床はフローリング、寝具はベッドが望ましいですが、スプリングマットは干せない、洗えないという欠点があります。干せるタイプの敷布団やマットを使用する方が良いかもしれません。できればホコリがたまる家具を置かないほうが良いです。さらに、寝具は防ダニ加工を施したものを推薦します。そして、床は毎日掃除機をかけることで抗原である塵ダニ、ホコリがかなり減ります。さらに、寝具はよく干して乾燥させ掃除機をかけるようにしましょう。雨などで湿気の多いときは布団乾燥機を利用することも良いでしょう。
JPGL2012第4章を参考に環境整備のポイントを書きます。

寝具:防ダニ布団の使用、高密度繊維布団カバーの使用およびこまめな洗濯、日光干し、加熱・乾燥・殺菌ランプによる処理。掃除機を用いた集塵。

じゅうたん:使用しないことが望ましい。フローリングに張り替える。ホットカーペットもできる限り使用しない。

ソファ:布製のものは使用しない(革製か合成皮革のものを使用する)

ぬいぐるみ:処分することが望ましいが、情操面から必要な場合には洗濯のできるものを少数にとどめる

家具:数を減らす。扉をつける。ホコリがたまらないように家具の上に隙間をあけない。掃除のしやすさを考え、家具の上にものを置かない。移動できるようにして、家具の裏を掃除しやすくする。

カーテン:ブラインドに替える。洗濯しやすい素材のものにする。

ペット:イヌ、ネコ、ハムスターなど毛の生えたペットは飼わない

掃除機:フィルター付きで集塵袋も二重になっているものが望ましい

鉢植え:室内におかない。

洗濯物:室内に干さない

暖房器具:石油やガスなどの化学物質を発生する器具は室外換気型が望ましい。

建材:揮発性有機化合物を含有するものはさける

タバコの煙:家庭内での受動喫煙を帽子するために同居者の禁煙を強く指導する。


(3)就寝時にマスクの着用をお勧めします。

私の恩師、国立病院機構三重病院の藤澤隆夫先生らのグループと私のクリニックに通院中の喘息患者さんにお願いし、ユニ・チャームの超立体マスクを寝る前に着用してもらいました。1カ月間着用した場合と着用しなかった場合を比べると、喘息症状がなかった日がそれぞれ90.7%と82.1%でした。つまり、マスクを着用して寝ると8.6%喘息症状が改善したことになりました。この理由として、夜間睡眠中に吸いこむ抗原の量が減ったことやマスクによって息が加湿され保温されたことが影響していると思われます。10-12月の喘息シーズンは是非マスクを着用して寝ることをお勧めします。ただし、4割程度は朝になると外れてしまいますので、着けていて息苦しさがなく外れないようなマスクの開発が望まれます。

(4)受動喫煙の防止。

タバコの煙は、吸っている本人がフィルターを通して吸う「主流煙」と吐き出す「呼出煙」、さらに火をつけた先端から出る「副流煙」があります。そして吸っている本人以外の周囲の人が「副流煙」と「呼出煙」(あわせて環境タバコ煙)を吸うことを「受動喫煙」と言います。このタバコ煙にはニコチン、タール、一酸化窒素、シアン化合物などなんと4000種類もの有害物質が含まれています。タバコ煙は気道の上皮粘膜を傷つけ、気道の過敏性を悪化させます。当然、喘息にとって百害あって益無し。また、妊婦がタバコを吸うと胎児に影響し発育が悪くなります。乳幼児喘息を発症する危険因子としても大変問題となっています。受動喫煙防止は、すぐにでも実施できる喘息予防といえます。
日本での喫煙率は、成人男性が32%、成人女性が12%で平均23%でした。これは先進国の中ではまだ高いほうです。喫煙はニコチン依存症という「病気」です。医療機関では禁煙外来を設けてこのニコチン依存症を治すことができます。治療薬もありニコチンパッチやガムなどニコチン置換療法以外に、最近はチャンビックスという薬がよく効いて禁煙できる人が増えてきました。タバコも値上がりしさらに禁煙が進むように願っています。
さて、いきなり禁煙が難しい場合、受動喫煙を防ぐためにまず屋内で分煙をしましょう。よく台所の換気扇の下で吸っているとかトイレで吸っていると言われる方がおられますが、まったく意味がありません。室内にタバコの臭いしますよね・・・子供もトイレ使いますよね・・・。タバコを吸っている部屋は、吸っている人がいなくてもタバコ臭いです。これは「残留タバコ煙」と言い壁やカーテン、空調にタバコの成分が付着していることを指しています。最近ホテルでは禁煙ルームがはやっています。空調にタバコの煙が残っていると臭いため、喫煙できる部屋は嫌われています。喫煙する方は必ず屋外で吸うか、喫煙する部屋に子どもが入らないようにすることから始めましょう。
タバコの煙対策など室内の環境を整備することは、薬物療法の効果をより良くする手立てです。例えば、タバコの煙により気道上皮が傷害され喘息を悪化することは容易に想像できます。さらにタバコの煙を吸うと、吸入ステロイド薬の効果が低下するという報告もあります。最近、厚生労働省はタバコ枠組み条約締結国として、喫煙防止を明確に発信しています。禁煙の流れは官公庁や学校、益など公共の建物内に広がっており、さらに医療機関は建物ばかりではなく敷地内禁煙が多くなってきました。また飲食店や大手スーパーマーケットなどへも分煙を勧めています。さらに繁華街では路上喫煙禁止の地域が増えてきました。喫煙されない方も子どもと出かけるときは、ホテルや飲食店などでは必ず禁煙室や席を選ぶようにしましょう。

以上のように環境整備をすることは、薬物療法以外に喘息を早く治す近道です。是非、生活環境や習慣を見直して、できることから始めましょう。

次回は、秋の運動会シーズンを迎えますので、運動誘発喘息と運動療法を解説します。


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2012年08月27日 14:13に投稿されたエントリーのページです。

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