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3 東日本大震災に対する支援活動のご報告 〜岩手県気仙地区「アレルギー相談」事業 中間報告〜  NPO法人アレルギー支援ネットワーク 理事/あいち小児保健医療総合センター アレルギー科 伊藤浩明 漢人直之/メールマガジン70号

 東日本大震災の支援事業として、岩手県気仙地区(大船渡市、陸前高田市、住田町)においてアレルギー相談を行っています。2012年7月から11月の間に合計6日間実施する計画で、これまでに前半3回を終了しました。

第1回 7月8日(日)県立大船渡病院(伊藤浩明)
第2回 8月19日(日)吉浜地区拠点センター(漢人直之)
第3回 9月2日(日)高田竹駒地区コミュニティーセンター(伊藤浩明)

現地に到着するには、仙台まで飛行機で、それから東北新幹線とJR大船渡線を乗り継いで気仙沼まで行きます。かつては沿岸部を走って大船渡まで行けた路線ですが、線路はすっかりなくなって復旧する目途がなく、タクシーで1時間かけて大船渡にはいります。道のりの随所に、打ち上げられた船がそのまま残されています。
大船渡市は、狭く凹んだ地形が幸いして津波の被災面積が比較的狭く、港湾施設などの復興も比較的進んで、活気を取り戻しつつあるように感じられました。一方で陸前高田市は、かつて広い市街地だったと思われる平地の全域が跡形もなく消失し、さらに川に沿って数キロ上流まで被害が及んでいます。随所に瓦礫の山が残り、復興に向けた計画がまとまらないために、まだ「片付けている」状況のように思われました。
この圧倒的な現実に対して、自分自身や支援ネットの小さな活動は「支援」などというにはおこがましい、取るに足らない事柄に思えます。ただ、この機会を通して自分がこの現場に立ち、知っておかなくてはならない歴史の一場面を体験できることに感謝です。
 この3回で、合計26人のご相談を受け付けました。相談の内容は、食物9件、湿疹13件、ぜん息13件、予防1件(一部重複あり)です。症状は比較的軽症で、かかりつけ医のある人が大部分でした。現在の症状や治療方針について確認し、現在の治療で大丈夫ですよと安心していただいたり、自分で工夫できることのアドバイスをお話ししています。相談のまとめを文書でお渡しし、中には主治医の先生へのメッセージを含める場合もありました。
特に、軽い食物アレルギーの疑いがあって食べる事を躊躇されている方に、安全に食べられる可能性をお話しして、不要な心配や制限を減らしていただくことが、相談事業の大きな目的です。実際に、相談会場の中でためしに食べていただき、安全が確認できて喜ばれる方もいました。
 翌月曜日には、大船渡病院の小児科外来で、アレルギー患者さんの診察をさせていただいています。こちらでは実際に血液検査をしたり、経口負荷試験を行って食べられることを確認したりと、より直接的なアドバイスを行っています。
 相談会場や診察には、大船渡病院や岩手医科大学の先生が立ち会って下さいました。地元の若い先生に少しでもアレルギーの診療を伝えたい、という当初の目的にかなったもので、大変嬉しく思っています。さらに、岩手医科大学の先生が、10月にあいち小児保健医療総合センターまで見学に来て下さることになりました。できる限りのことをお伝えして、地元に持ち帰っていただけるようにご援助します。
 残された3回、私たちも訪問できることを楽しみにしています。

この事業は、下記の多くの皆さまのご協力のもとに実現し、当日の会場運営も含めてお世話になっています。この場をお借りして、お礼申し上げます。
●「子育てサポータースマイル」「子育てサークルきっぴんきっず」「子育てサークルきらんきっず」
●県立大船渡病院小児科の渕向透部長はじめ医師・看護師の皆さま
●岩手県(健康福祉部健康国保課、同部児童家庭課、総務部法務学事課私学振興担当、教育委員会)
●大船渡市(健康福祉課大船渡市保健介護センター、教育委員会など)
●陸前高田市
●岩手医科大学小児科、日本小児アレルギー学会の諸先生