新年度に生活環境の変化があった方もいるかと思いますが、適度な息抜きはできているでしょうか。気管支喘息の発症、悪化、日常管理に心理的要因が関係することは多くの研究報告で示されていますが、喘息予防・管理ガイドライン2012でも研究報告の信憑性のランク(エビデンスレベル)は最も高いカテゴリーに分類されています。
喘息と心理的要因の関係性は大きく3つに分けることができ、1)喘息がストレスによって発症、悪化、持続する場合、2)喘息により不適応を生じている場合、3)喘息の治療に対する不適応を生じている場合があります。1)では喘息の病状変化の前に、ストレス要素が存在します。2)では、喘息治療に伴う精神的負担、時間的負担などが患者さんに生じることで、学業・仕事などの社会生活に不都合な問題がおきる場合が考えられます。3)の例としては、吸入ステロイド剤の副作用に対する誤った情報による恐怖感を患者さんが感じることで、喘息の適切な治療が妨げられる場合が挙げられます。
小児の喘息患者さんの場合は、心理状態が不安定な保護者が患児に対して適切に対応できず、喘息の日常管理が悪くなるケースもあります。この不安定な心理状態が一過性ではない場合は、心療科的な対応が必要となるケースがありますが、「喘息患児である」児の症状をコントロールするためには、まず、服薬管理、発作予防のための環境整備に焦点をあてた指導が必要となります。服薬や環境整備に問題がないにもかかわらず病状がコントロールできない場合は、vocal cord dysfunction(息を吸うときに、喉にある声帯が正常に開かない状態)などの他の病気(喘息との合併も含めて)が原因として考えられないか専門的な評価が必要となります。
さらに、小児ではオペラント条件づけによる喘息発作の例もみられます。オペラント条件づけとは個体(ヒト)の自発的な行動の直後の環境の変化に応じて、その行動の頻度が変化するように学習することを意味します。喘息では、症状出現時に保護者が過剰な対応をすることで、発作が保護者の過剰な関わりを得るための快刺激であると、患児は学習し、発作頻度が増えることになります。オペラント条件づけを解除するためには、発作時に過干渉を行わず通常の対応をすること、非発作時に患児にどのように向き合うかを考えていくことが必要となります。喘息の長期管理薬が非発作時の病状コントロールに大切なことと同じように、オペラント条件づけを考えた心理的アプローチも非発作時の対応が重要ということですね。
参考資料:
Gustafsson PA et al. J Pediatr 125;493 (1994)
大矢幸弘 喘息 25;64 (2012)
喘息予防・管理ガイドライン2012
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012