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6 「アレルギーのおはなし」第十二回〜アトピー性皮膚炎と紫外線〜/メールマガジン79号

 みなさま、いかがお過ごしですか。今年も夏になり、月別紫外線照射量のピーク期になってきました。サンスクリーン剤(日焼け止め)による紫外線防止効果の表示基準が変更されたことを2月(7回目)の記事に書きましたが、今回はアトピー性皮膚炎と紫外線の話題にふれましょう。
 私たちの皮膚がもつ役割の一つとして、体外からの微生物や刺激の攻撃から身を守り、体内から水分の過剰な蒸散や体液の漏出を防ぐバリア機能があります。アトピー性皮膚炎では、このバリア機能が低下しているため、体外からの刺激に弱く体内の水分を失いやすい特徴があります。さらに、かゆみを感じる神経が体表面近くまで伸びているため、かゆみを感じやすく皮膚を搔いてバリア機能にダメージを与える悪循環が生じます。アトピー性皮膚炎には様々な悪化要因がありますが、ダニ、細菌、汗に含まれる成分などはバリア機能の低下により影響を受けやすくなる代表的な悪化要因として知られています。では、皮膚に浴びる紫外線はアトピー性皮膚炎の直接的な悪化要因になるのでしょうか。
 紫外線がアトピー性皮膚炎の悪化要因になると思われている方がときどきおりますが、実は、その医学的根拠はほとんど得られていません。では、紫外線がアトピー性皮膚炎の悪化要因になるという誤解の原因は何なのでしょうか。最も多いと考えられているケースは、日光による皮膚温度の上昇や発汗によって、かゆみが強くなることです。汗に含まれるかゆみに影響する成分には、核蛋白、尿酸、アデノシンなどがあり、患者さんのバリア機能が低下した皮膚から透過されて刺激になります。このようなアトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ方法の基本は、外出などにより汗をかいた後はシャワーで清潔を保ち、外用薬を適切に利用したスキンケアです。皮膚温の上昇や汗によるケースと比較するとまれですが、多形日光疹、光接触皮膚炎などの光線過敏症が合併したことをアトピー性皮膚炎の悪化と勘違いするケースもあります。光接触皮膚炎は、脂溶性で皮膚から吸収されやすい薬や皮膚に触れた植物の成分などが、吸収された後に日光と反応することで生じます。
 このような紫外線に対する誤解がある一方で、紫外線を利用したナローバンドUVB療法は生活指導や外用薬でコントロールに難渋する一部の成人アトピー性皮膚炎に対して利用されています。もちろん、過度の紫外線照射は皮膚や眼などに生じるいくつかの病気のリスクになりますので、紫外線防止の工夫は必要です。また、皮膚に気になる症状があれば、主治医に早めに相談してください。

参考資料:
Katayama I et al. Allergol Int 60;205-220 (2011)
Tajima T et al. Dermatol Sci 17;101-107 (1998)
堀尾武 皮膚の科学5;34-37 (2006)

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2013年06月30日 06:04に投稿されたエントリーのページです。

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