みなさま、いかがお過ごしですか。
夏から初秋は子どもたちをはじめとして私たちヒトが外で遊ぶ機会が増えるだけでなく、昆虫が活発に活動する時期にあたるため、虫刺症(虫刺され)が多くなる時期ですね。今回は最も頻度が多い蚊による蚊刺症をテーマにしました。
世界中に分布する蚊は全体で約3200種が知られており、日本国内では100種類を超える種が生息を確認されています。身近な存在としては、黒白の縞模様で知られるヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、茶褐色のアカイエカ(Culex pipiens pallens)が思い当たるのではないでしょうか。
蚊に刺されると赤く腫れますが、これは蚊の唾液腺物質に対するアレルギー反応によるもので、直後に膨疹や紅斑がみられ1時間前後で消失する即時型反応と、数時間後に再び紅斑、丘疹、水疱を生じ24〜48時間でピークになる遅延型反応に分けられます。
初めてのお子さんをもつ保護者が「蚊に刺された腫れが大きくて消えない」と心配して受診されるケースがありますが、蚊にさされた時の反応は刺された経験の多さによって影響を受けることが知られています。初めて蚊に刺された乳児は無反応(stage I)ですが、刺された経験が少ない乳幼児では直後の即時型反応よりも翌日以降に強い遅延型反応を生じる場合が多くなります(stage II)。刺された場所の発赤、腫脹、硬結が広い範囲に及び、消退まで数日かかる場合がありますので、その間に搔き壊しててブドウ球菌などの細菌感染を伴うことで伝染性膿痂疹(とびひ)を生じるケースもあります。子ども達が成長すると蚊に刺された経験が増えますので、遅延型反応と即時型反応の両方がみられるようになり(stage III)、青年期以降は年齢を重ねると遅延型反応が弱くなり即時型反応のみ(stage IV)、さらに無反応(stage V)になる傾向があります。
極めて稀なケース(国内の年間発生数は約100件前後と推定)では、刺された場所が赤く腫れ、大きな水疱から壊死、深い抜き打ち状潰瘍などを生じることがあります(皮膚の深くまで症状がみられ、黒いかさぶたが作られ、かさぶたが取れた後が潰瘍による穴になります)。同時に数日続く発熱やリンパ節腫脹もみられますが、このような一連の症状が蚊に刺されると必ず生じる場合は、EBウイルスが関与している稀な病態の可能性もありますので、主治医にご相談ください。
蚊刺症を防ぐ方法は、蚊の多い朝夕の時間帯や植物の茂みを避けること、皮膚の露出部を最小限にすること、露出部には虫除け剤を用いることなどが挙げられます。また、子どもに虫除け剤を用いる場合は、ジエチルトルアミド(ディート)を含む製品には年齢にあわせた使用制限がありますので、使用前に製品の記載をご確認ください。
参考資料:
馬場直子 小児科診療 75;2105-2107 (2012)
河敬世 ウイルス 52;257-260 (2002)
厚生労働科学研究 難治性疾患克服研究事業「慢性活動性EBウイルス感染症の実態解明と診断法確立に関する研究」平成21年度総括・分担研究報告書