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1 「アレルギーのおはなし」第十五回(最終回)〜「アレルギー疾患と健康食品」〜/メールマガジン82号

みなさま、いかがお過ごしですか。この連載も15回目の今回が最終稿となりました。身近なテーマを取り上げるよう努めてきましたが、皆さまの生活に役立つ内容がありましたら幸いです。さて、最終回は興味をお持ちの方も多いかと思います「健康食品」をテーマにしましたが、はじめに前置きが二つあります。一つは、健康食品には法律上の定義はありません。そこで、ここでは「健康食品」とは、特定保健用食品や栄養機能食品を除いた、健康維持・増進を期待して利用される食品全般を指すものとします。二つ目に、私は特定の商品を推奨あるいは否定する立場ではなく、機能性食品の研究や保健所の業務に従事していた者の意見として記します。
 さて、現在も、アレルギー疾患に対する効果を目的とした「食品として摂取できる機能性成分」の研究が行われています。臨床での利用例として、乳酸菌やビフィズス菌を用いたプロバイオティクスやn-3系多価不飽和脂肪酸(EPAやDHAなど)は、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2012に「基本治療薬と併用されるいわゆる付加的治療法」の一つとして記載されています。しかし、これらの例でも補助療法としてある程度は役立つ可能性はありますが、一般臨床の基本療法とされていません。現段階では、機能性成分の多くが研究段階であり、ヒトを対象とした科学的評価に基づいた有効性が明らかになっておりません(「明らかでない」から研究には魅力があります)。
 一方、市場で販売されている健康食品は、何らかの疾患に対する治療を目的とされていません。このため、治療や予防を目的とした「効果・効能」を期待する表示をすると、健康増進法や薬事法に違反します。さらに、何らかの疾患を治療中の人が健康食品を使用することで、症状が悪化することや、使用中の薬との間に相互作用が生じることで本来の治療が妨げられる可能性もあります。尚、健康食品を摂取することで「一時的に体調が悪くなるのは、体から毒が出る時期」などの「好転反応」として説明することに科学的根拠はなく、このように説明して商品の使用を継続させる表現も法規定に違反します。
 では、疾患の治療中ではない人が健康食品を使用すると、さらに健康的な生活が必ず安全に得られるのでしょうか。いわゆる「ダイエット」を目的とした健康食品による健康被害がニュースになったことがありますが、これまでにアレルギー疾患に関する事例も報告されています。小池らが行った健康食品の健康被害に関するデータベース解析では、アレルギー反応が関わった代表例としてクロレラによるアレルギー性皮膚炎、豆乳やローヤルゼリーによるアナフィラキシー・ショック、アガリクスによるアレルギー性肺炎などが挙げられています。また、加藤らはキトサンの摂取を原因とした全身じんましんと呼吸困難感の発生例を報告しており、原因物質がタンパク質ではなく多糖類であっても分子量や化学的特徴によりアレルゲンとして作用する可能性を指摘しています。診療や保健所などで遭遇する相談事例には、「天然由来」「自然食品」などの表現から安全な商品と考える例がありますが、これらの事例のように、天然由来品が化学合成品と比較して安全性が高いという根拠はありません。天然由来品には、産地や収穫時期により品質が一定しない、全ての含有成分が明らかでない、不純物の除去が不完全などの可能性もあります。
 それでは、健康食品の上手な利用法は、どのようにすれば良いのでしょうか。まず、健康食品を利用する際には、その必要性を考え、いつから何をどのくらいの量で使用したかを判るようにしておきましょう。また、今回例示した健康食品の使用によるアレルギー症状は一部の報告例ですが、健康食品の摂取により体調に異変があれば、すぐに摂取を中止しましょう。健康食品を利用する際の注意点については、厚労省のサイトにも一般消費者向けのパンフレットがありますので、参考にしてみてはいかがでしょうか
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/pamph.html)。

参考資料:
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2012
小池麻由ら 医薬品情報学 14; 134 (2013)
加藤弥寿子ら アレルギー 54; 1427 (2005)

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2013年09月30日 05:45に投稿されたエントリーのページです。

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