メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。
今回も災害復旧支援・防災におけるアレルギー支援の取り組み事例について紹介いたします。
前回に続き、「アレルギー対応の防災訓練事例」について紹介します。
前回の防災訓練事例では、炊き出しを提供する側の訓練について紹介しました。
今回は、炊き出しをいただく側の訓練について紹介します。
炊き出しを提供する側の訓練事例には、使用食材の詳細な情報を提供して、食べられるかどうか判断してもらえるようにする必要があることを啓発する事例、使われている食材をどうやって伝えるか具体的な方法を考えて実際に試してみる事例などがあります。しかし、いつもこのような食物アレルギーに配慮した炊き出しがされるとは限りません。アレルギー対応炊き出しであると明示して取り組んでいる例は、まだまだ少数派と言えます。
炊き出し担当メンバーのなかに食物アレルギーに詳しい方がいて、きちんと対応してくれれば期待も持てますが、そうでない場合は、どうしましょう?あきらめて何も食べられないまま我慢し続けますか?おそらくそれでは事態は改善されないでしょう。炊き出しをいただく側として、メニューに含まれる食材について聞いてみたり、調味料や加工食品の包装に示されているアレルギー表示を確認させてもらったり、積極的に働きかけることも必要ではないでしょうか?そのような行動が、アレルギー対応の必要性に気付いてもらう啓発につながるのではないでしょうか?
訓練では、アレルギーっ子本人だけでなく、親子で、あるいは家族で参加し、炊き出し配給所で大人がメニューについて確認することも可能ですが、大人が不在の時に発災したり被災して子どもだけになった場合はどうしましょう?食物アレルギーのことに詳しくない大人の炊き出し担当メンバーに、アレルギーっ子本人が食材について聞き出すことはできるのでしょうか?自分で判断することはできるのでしょうか?
2014年10月西尾市鶴城小学校防災フェスタでは、西尾市の「アレっ子元気」会員によると、「アレルギーサインプレート」を小1児童に持たせて、炊き出し配給場所で提示させ、自分自身でアレルギーの子も食べられるか聞かせる試みをしたそうです。守ってくれる保護者がいなくなっても生き延びるためには、自分で食べられるものを確保することも覚えてほしいという、子どもにとっては負担の大きい訓練と言えます。残念ながら自分でうまく伝えられなかったそうですが、いざというときの練習として、子ども自身も炊き出しをする自主防災組織もリアルな対応訓練となったようです。
食物アレルギーであることを示すツールもいろいろと開発されています。
「アレルギー緊急カード」がアレルギー支援ネットワークから配布されています。
本人や保護者の名前や連絡先、アレルギーに関する情報、緊急連絡先、かかりつけ医、家族の集合場所避難先などを書き込めるようになっています。これらをあらかじめ記入して備えておけば、子どもが話して伝えることが困難な内容でも、読んでもらえば伝わります。
特定非営利活動法人ALサインプロジェクトでは、
食物アレルギーサインプレート
http://alsign.org/signplate.html
食物アレルギー緊急時カード
http://alsign.org/kinkyuji_c.html
食物アレルギー児災害時用ビブス、食物アレルギー災害時用ゼッケン
http://alsign.org/zekken.html
などを提案しています。
アレルギーっ子側からの働きかけで、自主防災組織の炊き出し担当が対応方法について関心を持ち始めたら、次は、食物アレルギー患者のための災害用保存食品やアレルゲンを含まない加工食品についても情報提供し、アレルギー対応メニューを検討する参考にしてもらいましょう。「食物アレルギーひやりはっと事例集2014」には、これらの情報がたくさん掲載されています。一緒に読んで勉強してから訓練に臨むと、相互理解も進むのではないでしょうか?
食物アレルギーひやりはっと事例集2014
http://www.alle-net.com/info/info06/info-01-3/
今回は、「アレルギー対応の防災訓練−2」として、炊き出しをいただく側の訓練について紹介しました。
次回は、「救援物資(アレルギー対応備蓄食)輸送訓練−2」として、救援物資輸送訓練と町内会の訓練事例について紹介します。
防災士 中根輝彦
日々つぶやいています。
@TeruhikoNakane
内容は筆者個人の考え方に基づくものです。アレルギー支援ネットワークを代表するもの、方針を反映したものではありません。
ご意見ご感想をいただけると嬉しいです。次の原稿を書く励みになります。アレルギー支援ネットワークの事務局まで、お寄せ下さい。
宛先:info@alle-net.com