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7 アレルギーっ子の防災第17回 「アレルギー対応の防災訓練−3」/メールマガジン99号

メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。
今回も災害復旧支援・防災におけるアレルギー支援の取り組み事例について紹介いたします。

 今回は、アレルギー対応の防災訓練の事例を紹介します。
前回の原稿で紹介した宮城県仙台市福住町町内会の訓練で実施された事例です。

 2014年11月9日(日)、8:30ころから12:00ころまで約800世帯から老若男女多数の町民が参加して開催されました。

 町内放送、消防団による巡回避難勧告などの後、会場となる福住公園へ徒歩避難してきます。
全住民の名簿が掲出された安否確認用ボードに一人ひとりチェック印を付け、未確認の住民については、避難誘導班が自宅まで探索に行きます。必要に応じて要援護者支援として車いす搬送もします。都合により訓練に参加できない方もいますが、「行方不明/出先と連絡を取って安全を確認済み」など、全員の確認を取ります。

これらの訓練は10年以上前から毎年繰り返され、3.11のときも、いち早く全員の安否確認を市役所災害対策本部へ報告することができました。

 安否確認が終わった後は、会場で各種啓発・基礎訓練を展開します。
1)ベニヤ合板で組み立てた小屋を倒壊家屋に見立てて負傷者救出・応急手当・担架搬送訓練、
2)ベニヤ合板の倒壊家屋を燃やして水消火器・粉末消火器・バケツリレーによる初期消火訓練、
3)日赤・救助犬協会・JAFなど関係機関による訓練展示、
などが順に進行していきます。

その間、会場をぐるりと囲むように設置された10個ほどの啓発ブースで、参加団体がそれぞれ各種説明やデモなど展開します。途中、これらの団体を1つずつ紹介しながら、5分くらいずつ会場の全員にアピールする時間もとっています。

 2014年度は新たな取り組みとして中学生の参加をテーマとし、それぞれの役割を決めて訓練項目に取り組みました。学校側と調整し、授業の一環としての参加となったようです。

学校側主導で地域団体に協力を依頼する取り組みはよく見受けられますが、地域団体の呼びかけに学校側が応じるのは珍しいのではないでしょうか?

 さて、啓発ブースの一つにアレルギーの啓発をしているところがあり、毎年参加されています。各種資料の配布やアレルギー対応食品のサンプル展示、アレルギー相談などを行っています。

 このブースでも、中学生の訓練参加に呼応して、アレルギー対応アルファ化米について学習するカリキュラムを追加していました。

ガスカートリッジ式の卓上コンロで湯を沸かし、パックから脱酸素剤を取り出して、湯を注いで20分待つ、というおなじみの手順ですが、中学生たちが自分で作業をして覚えること、アレルギー対応の食品表示を確認すること、アレルギー対応品はアレルギー患者への配布を優先して欲しいこと、アレルギー患者でない人も食べられること、などを現地現物で体験してもらいました。

 どちらかというと、炊き出しの練習というより食育のテーマ学習のような気がしないでもありませんが、「あっちでやってる炊き出しはアレルギー対応ってどうなってるの?」という気付きもあったようです。

 啓発ブースには、防災用品を販売している業者のサンプル紹介もあります。
毎年参加している業者は、訓練に参加することでこの町内会のニーズを読み取り、翌年は新たな提案をしてくる、ショールームや見本市のような位置づけになっているようです。アレルギー啓発を意識してかどうかわかりませんが、新商品を紹介しています。2014年度の新ネタとして紹介していたのが、「家庭用非常食3日分セット」(株式会社大潟村あきたこまち生産者協会)

「家庭用非常食3日分セット」については、こちらをご参照下さい。

株式会社大潟村あきたこまち生産者協会
http://akitakomachi.co.jp/

同社家庭用非常食(3日分セット)
http://akitakomachi.co.jp/item/hizyoshoku

 これはいうなれば、長期保存が可能なレトルト食品。ドラッグストアなどでは、調理済みのベビーフードや介護食、各種機能性食品、栄養補助食品などパック入りのものが見受けられますが、いずれも防災備蓄を意識した長期保存対応品ではありません。それに対して、このレトルトは5年保存可能な商品です。

 メニューも「チャーハン」「カレーピラフ」「きのこごはん」「野菜がゆ」「かぼちゃがゆ」「昆布がゆ」「野菜スープ」「トマトスープ」「クリームスープ」といろいろあります。

毎食同じメニューとなってしまいがちな炊き出しや支援物資。
避難生活における食事の栄養バランスや気分転換、話題づくりのためにも、メニューはいろいろ試しておきたいですね。やわらかめのごはんやおかゆなど小さな子どもや高齢者向け、発熱材セット入りで温めてたべられる。「食物アレルギー特定原材料等27品目と貝類不使用」がうたい文句のアレルギー対応食。

 前回の原稿で紹介した「救給カレー」と同様、除去品目、保存期間、価格、入手までに必要な期間、メニューやバリエーションなどをよく検討して備蓄品に加えてみるのもよいのではないでしょうか。

 どんな食品もそうですが、やはり一度は試食してみることをお勧めします。いろいろ検討してみても、最後は「味や食感」ということもあるでしょうし。いざというときに配給された救援物資の中から、「これなら大丈夫」というものを安心して選ぶためには、大切な取り組みだと思います。

 ほかにも業界団体として、「公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会」というのがあり、ここでも備蓄性をアピールして災害対応情報を発信しています。

公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会
http://www.jca-can.or.jp/index.html
同法人みんなのレトルト
http://www.retortfood.jp/index.html
同法人災害に備える
http://www.retortfood.jp/measures/index.html

 アレルギーの会の防災イベントとして、アレルギー対応備蓄食品の「大試食会」をやってみるのもよいかもしれませんね。いろいろな食品をお試しして情報を共有すると、救援物資として配布を希望する「アレルギー対応備蓄食希望リスト」なんていうものができるかもしれませんね。

被災時に、ただ漠然と「アレルギー対応備蓄食が欲しい」と要望するよりも、より具体的な商品を指定したほうが、支援側はよりニーズにあった対応をすることができる大変ありがたい情報になります。このメルマガで何度もお伝えしている「アレルギー対応備蓄食の分散共同備蓄相互支援ネットワーク」も一歩前進するかもしれません。毎日の食事の延長として、食べることを楽しみながらコツコツと取り組んでいきましょう。

 次回は、「アレルギー患者団体の共助の仕組みづくり−2」として、「第2回東海・関西・中国地域防災対策ネットワーク会議」について紹介します。

防災士 中根輝彦

日々つぶやいています。
@TeruhikoNakane

内容は筆者個人の考え方に基づくものです。アレルギー支援ネットワークを代表するもの、方針を反映したものではありません。

ご意見ご感想をいただけると嬉しいです。次の原稿を書く励みになります。アレルギー支援ネットワークの事務局まで、お寄せ下さい。
宛先:info@alle-net.com

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2015年02月27日 14:06に投稿されたエントリーのページです。

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