この2年間、副理事長としてアレルギー支援ネットワークの活動に関わって参りましたが、この度、須藤千春先生から理事長を引き継ぐことになりました。大役を仰せつかり身の引き締まる思いですが、使命を全うすべく、全力をつくす所存でございます。つきましては、皆様方にはこれまで以上のご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申しあげます。
さて、昨年、アレルギー支援ネットワークは第66回保健文化賞を受賞しました。この賞は1950年に創設された歴史ある賞で、健康増進・疾病予防などの保健医療分野において顕著な実績を残した団体および個人に贈られます。今回の受賞では、食物アレルギーの子どもたちを支える社会環境をよりよくするため、「アレルギー大学」を創設して、栄養士や教職員等の専門職に対してアレルギーに関する教育啓発活動を進めてきたこと、そして、東日本大震災などの被災地域において、アレルギー児への災害支援活動に対して一定の役割を果たしたことが高く評価されました。
アレルギー支援ネットワークはこれからも「アレルギー大学」を軸に事業を展開していきます。「アレルギー大学」は全国で唯一のアレルギー、とりわけ食物アレルギーの専門知識を体系的に学ぶことができる市民講座であり、東海地方で実績を積み重ねながら毎年内容を刷新しています。その甲斐あって、全国のアレルギー関係団体や学校法人などから事業モデルや教材の問い合わせが数多く寄せられるようになりました。今年度から、2011年に開講した「インターネットアレルギー大学」を全国展開する予定です。さらに、管理栄養士・保育士を目指す学生を対象とした「ベーシックプログラム」(「アレルギー大学」の1日集中講義版)を今後も定着させ、「アレルギー大学」事業の財政基盤の確立と、将来の「アレルギー大学」受講者の掘り起こしを進めていきます。
アレルギー支援ネットワークは東日本大震災直後から現地にスタッフを派遣し、その後のアレルギー患者家族への情報提供や相談支援活動を継続的に行ってきました。例えば、岩手県大船渡市に東北事務局を開設し、アレルギー相談会やアレルギー講演会を開催するなどしています。「インターネットアレルギー大学」を東日本大震災支援に繋げることができれば、被災地域への支援活動を末広がりに継続させることができると思います。早速、被災地域の患者家族への無料配信を行うための段取りを進めていく予定です。
昨年6月、アレルギー疾患対策基本法が制定されました。アレルギー疾患対策は火急の国民的課題です。2011年8月に出された厚生労働省健康局疾病対策課長通知「アレルギー疾患対策の方向性等」では、当面の目標として、アレルギー疾患を「自己管理可能な疾患」とすることを目指し、具体的には、患者やその家族が身近な「かかりつけ医」をはじめとした医療関係者等の支援を受け、治療法を正しく理解し、生活環境を改善し、また自分の疾患状態を客観的に評価するなどの自己管理を的確に行うことができるよう、種々の環境整備を図るとしています。政府が掲げる当面の目標の実現可能性に関わらず、多くのアレルギー専門医や研究者、管理栄養士などの専門家は、今こそ専門知識を広く患者家族や地域住民に提供し、アレルギー疾患の予防活動をさらに充実させたいと願っています。
「アレルギー大学」はこうした専門家集団の社会的使命感に支えられて発展してきましたし、今後も専門家集団の社会貢献への意欲の受け皿としての役割が期待されています。理事長として、専門家集団に広く「アレルギー大学」を紹介し、専門家集団の力をいっそう強く引き寄せたいと思います。
また、アレルギー支援ネットワークの将来をスタッフの献身にだけ頼ることがないよう、財政面を含む健全な運営を目指し、関係者で改善のための話し合いが継続してできるよう支援したいと思います。
最後に、壮大な抱負を述べさせていただきましたが、皆様から多くを教えていただきながら着実に前進できればと願っています。よろしくお願い申しあげます。