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7、最終回 第44回「防災講座-23:津波対策を知る」防災士 中根輝彦/メールマガジン126号

 メルマガをお読みの皆さん、こんにちは。防災士の中根輝彦です。

 前回に続き、津波避難について考えます。今回は官民連携について考えます。

 防災の世界では、「自助」「共助」「公助」と区別して考えることがありますが、厳密にいうと、明確な基準によりはっきりと区分されているわけではありません。同じ取り組み内容でも、対象範囲や立場によっては、自助にも共助にもなり得ます。共助と公助も同様に、民間と行政の共同で実施されている場合があり、民間主体化行政主体化によって、共助に見えたり公助に見えたりしているだけだったりします。民間と行政が、それぞれの強みをうまく組み合わせて役割分担し、弱点を補完し合う形を見出すことが大切です。人命や財産を守るために被害を最小限にとどめたいという思いは共通のはずです。

 津波対策の官民連携の事例を紹介しましょう。一つ目は、徳島県海部郡美波町阿部自主防災会の「マイ避難路と避難タイムライン」です。地区の人たちは、同じ地区内に住んでいても住んでいるところや避難行動の対応能力がまちまちなことから、それぞれが自分にとって最適な避難路(マイ避難路)を考え、自主防災会が自主的な訓練を重ね、避難経路の整備を繰り返してきました。避難経路は行政が指定したものではありませんが、訓練によって必要性や有効性を実証したことから、避難経路の整備に必要な費用の助成を受けられるようになりました。前回のメルマガで避難行動要支援者対策に言及しましたが、この地区の事例を発展させれば、避難経路の整備だけでなく、要支援者対策に必要な資器材の助成も望めるのではないでしょうか。

 2つ目の事例は、三重県度会郡田曽浦区自主防災隊の「生活必需品を防災倉庫に」です。津波避難は時間勝負だから、少しでも速く逃げられるよう身軽なほうが良い。重たい非常持ち出し袋を背負ってヨタヨタ走るよりも、あらかじめ安全なところに設置した器具庫に収納しておいたほうが良い。そのような考え方から、この地区の人たちは、それぞれの必要品をデイパックや旅行鞄に詰めて預けてあります。訓練のたびに中身の点検や入れ替えをして常に備えています。自主防災組織の活動を助成するために、行政が防災備品の購入を助成する例は多数ありますが、この例でも、支援内容を拡大解釈すれば、避難用備品の助成が期待できるのではないでしょうか。さらに、行政が準備する防災備蓄品や備蓄倉庫との連携も考えられると思います。

 3つ目は「地区防災計画」の策定です。市町村は「地域防災計画」を策定して、行政が実施する防災対策をまとめています。これを読めば、どんな内容か、どの部署が担当するか、どんなタイミングで実施するか一目瞭然です。記載されている内容は、行政の取り組みだけではなく、「住民・自主防災組織の取り組み」も記載されています。この部分に官民連携の余地があります。行政は自主防災組織への期待を込めて取り組み内容を記載しますが、住民側の意向を反映しているとは限りません。記載内容の通りに実践できるかどうかもわかりません。同じ市内でも地域特性や自主防災組織の対応能力のばらつきや変動もあります。これらを個別最適化するために、地区防災計画を策定し、地域防災計画の一部を特化することで、対策内容を変更してくことが可能です。このような取り組みにより、指定避難場所や避難経路の変更や追加をすることも可能になるのではないでしょうか。

 それぞれの地域で、自分たちにとって最良の対策を模索するべく行政とともにPDCAを回していただきたいと思います。

 さて、津波対策についても、お伝えしたいと思っていたことも一通り話して区切りがつきました。今回を持ちまして、連載終了とさせていただきます。

 今後もアレルギーっ子の防災を後方支援していきます。しばらくは、地元の地域包括ケア体制整備、地域での平常時の生活支援から災害時の支援へと展開していく取り組みに係わります。その中でアレルギー対策との連携も模索していきたいと思います。皆さんにご紹介できるような取り組み事例があったら、またメルマガに投稿するかもしれません。そのときはよろしくお願いします。長期にわたりお付き合いいただきありがとうございました。


防災士 中根輝彦
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2017年05月29日 11:08に投稿されたエントリーのページです。

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