「肌に優しいシャンプーの選び方」第二回
有限会社 あんだんて 有田浩三さん
5月号に「肌に優しいシャンプーの選び方」を書いたのですが、シリーズにしていただくことになりましたので3月26・27日に開催された「アレルギーっ子フェア」でお話ししきれなかったことを含めて少し詳しく書いていこうと思います。
前回、「シャンプーの役割」は、『“洗う”ことを通してQOL(生活の質)の向上に役立つ』ことと定義できるのではないかと書きましたが、なぜ“洗う”ことが必要なのでしょうか?
私たちのからだは皮脂が分泌され皮脂膜となって水分の蒸発を防いだり雑菌の繁殖を抑えたりしています。しかし放置しておくと老廃物になりますので清潔に保つためには洗浄が必要です。
皮脂膜は撥水性(水をはじく性質)ですので、お湯だけでは洗いきれません。ここで皮脂膜になじみやすい成分として界面活性剤が登場します。界面活性剤は1つの化合物のなかに油になじみやすい部分(親油基)と「水になじみやすい部分(親水基)とをあわせ持っています。
ここから少し難しくなりますが、“洗う”ことの原理を知るために必要なので一寸我慢して読んでください。
界面活性剤はマッチ棒の模式図で表されています。軸が親油基で頭の部分が親水基です。さらに親水基の部分がマイナスイオンのもの、プラスイオンのもの、両方持つものなどがあります。
一方、人の肌や毛髪はイオン的にはマイナスの状態になっています。肌や毛髪のイオン性と界面活性剤の持っているイオン性の組み合わせでシャンプーにおける役割を理解できます
★アニオン(または陰イオン)界面活性剤:マイナスイオンを持っています。石けんが典型的な例です。
界面活性剤のマイナスイオンと肌や髪のマイナスのイオン性が反発し油を抱き込んだ状態で肌から離れていきます。これが洗浄の原理ですのでシャンプーの主要洗浄成分に使用されます。
高級アルコール系、アミノ酸系などがあり低刺激性が話題になるのはこのグループです。
★カチオン(または陽イオン)界面活性剤:プラスイオンを持っています。
界面活性剤のプラスイオンと髪のマイナスのイオン性が引き合い吸着します。これでコンディショニング効果が出ますのでリンスなどに使用されますが、洗浄力はありません。
★両性界面活性剤:マイナスイオンとプラスイオンの両方を1つの化合物の中に持っています。
このため洗浄力がありながらコンディショニング性もありますのでシャンプーに配合されます。
★ノニオン(非イオン)界面活性剤:イオンを持たないものでシャンプーのごく一部に使用されています。
また、界面活性剤と聞いただけで不安感を持つ方もおられますが、そのようなものではありません。
10年以上前に界面活性剤の催奇性が問題になったことがあります。
これはアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ(ABSと略記され、一般に石油系界面活性剤といわれます。)というアニオン界面活性剤の話です。世界の研究者が追試(確認試験)したのですが再現できず今では否定的な考え方が主流です。ABSは洗浄力が強すぎるのでシャンプーをはじめ化粧品で使用されることはありませんが、当時の記憶が残っていて不安に思われる方があるようです。
この後、「界面活性剤の変遷」では低刺激性を求めてどんどん進歩していること、キーワードの「低刺激性」では低刺激性に差があるもののそれぞれ必要とされる界面活性剤であることを説明します。
いずれにせよ現在シャンプーに配合されている界面活性剤は安心してお使いいただけるものです。
その中でご自分に合わせて最適なものをお選びいただくのが良いと思います。