みなさま、いかがお過ごしですか。
気管支喘息の発作の出やすさが季節によって異なることは、よく知られていますね。真夏・真冬と比較すると春や秋の季節の変わり目がいわゆる「喘息シーズン」となります。国内報告の一例としては、KOYANAGIらは16歳以上の成人喘息患者さんを対象とした調査で気候の変化が最も多い喘息悪化因子であったと報告しています。
気象要因のなかでは湿度や気圧変化については一定の見解に至っていませんが、寒冷前線(天気図では三角形を連ねて示します)が通過するときには、気温の低下や大気中の浮遊物の移動などによって喘息発作が誘発される可能性が考えられています。さまざまな気象要因のなかで、気温の変化は最も影響が強く、前日と比較して3℃以上の気温低下、5時間以内に3℃以上の気温低下で発作が生じやすいとする報告があります。特に秋は、前日との気温差や夜から朝にかけた冷え込みがあるため、気温変化による喘息発作に注意が必要ですね。
また、ダニがアレルゲンである患者さんは多いですが、夏に増えたダニは秋になると死がいとして喘息発作の誘因になります。
呼吸器に対するウイルス感染も喘息発作の重要な誘因として知られています。なかでもライノウイルスは、喘息発作に関係する代表的なウイルスであり、ウイルス感染が関与する小児喘息発作の約60%でライノウイルスが検出されたという報告もあります。ライノウイルスは上気道感染=「風邪(感冒)」の代表的な原因ウイルスです。春・秋に流行シーズンがあり、これは「喘息シーズン」と一致します。ライノウイルスには多くの血清型があるために同じシーズンに何度も感染することがあり、すべてのライノウイルスの感染を防ぐワクチンをつくることは難しいと考えられています。また、呼吸器ウイルス感染とアレルゲンの作用が相乗的に喘息悪化に作用する可能性も知られています。
気管支喘息の治療は発作を予防する長期管理が重要ですが、季節と喘息の関係を知って生活を工夫してみましょう。気象変化に対しては日常生活で服装や冷暖房の調節に留意し、ダニ除去の基本の掃除機かけは1平方メートルあたり約20秒が推奨されます。ライノウイルス感染対策は手洗いと、症状がある人はマスクなどの気遣いを忘れずに周囲にうつさないようにしましょう。
参考文献:
KOYANAGI K ET AL. ALLERGOL INT 58;519-527 (2009)
JOHNSTON SL ET AL. BMJ 310;1225-1229 (1995)
石崎達ら アレルギー 23;753-759 (1974)
伊東繁ら 現代医療 31;1325-1330 (1999)
小俣貴嗣ら 化学療法の領域 25;2454-2458 (2009)