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2 「アレルギーのおはなし」第十三回〜「職業性喘息」〜/メールマガジン80号

みなさま、いかがお過ごしですか。8月になり夏季休暇をとられる方もいるかと思いますが、職場で勤務中は咳に悩まされるのに休日には症状が軽くなるという経験はありませんか。今回は、7月に「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン」が刊行されたことにも合わせて、職業性喘息についてふれてみましょう。
 職業に関連して生じる喘息を「作業関連喘息」と呼びますが、職場の抗原に感作されて発症した「職業性喘息」と、既に他の原因で発症している喘息が職場環境で吸入する物質で悪化する「作業増悪性喘息」に分類されます。例えば、元々喘息があり、職場で冷気を吸うことで咳症状が悪化する場合は、「作業増悪性喘息」になります。この分類で分かるように、欧米や日本の分類では「職業性喘息」に「作業増悪性喘息」は含まれません。また、「職業性喘息」は2つの発症形式に分かれ、ある物質=抗原に感作されることで免疫学的な発症形式をとる「感作物質誘発職業性喘息」と、免疫学的機序ではなく刺激性により発症する「刺激物質誘発職業性喘息」があります。
 産業構造の変化に伴い、最近では原因物質の構成も変化をしています。以前は、動物や植物由来の物質が原因となる例が多かったのですが、近年は化学物質などの低分子物質が原因となる報告が増えています。低分子物質は免疫学的機序と刺激性などの複合的要因により多彩な症状で発症する場合があるため、診断が難しくなる臨床的な問題点があります。さらに、低分子物質が発生しやすい産業では、農業などと比較すると転職や職場転換が行いやすい場合があり疾患の発生頻度が把握しにくいこと、産業の発展により新しい原因物質が次々と作られていくという、社会医学的な問題点があります。
 次に、ガイドラインにおいて診断、治療、予防に重要とされている点をいくつかみてみましょう。診断で重要な点としては、「職業性喘息を疑った問診」「感作物質誘発職業性喘息の診断では、病歴と複数の検査の組み合わせにより診断率が上がる」「できるだけ早く診断する」ことが記されています。確定診断には「毎日の継続したピークフロー測定が有用」とされていますが、既に原因となる職場を異動している場合はピークフロー測定の有効性が下がります。
 一般的な喘息治療と同様に、職業性喘息でも環境整備を行わずに喘息の薬物治療だけを行うことは勧められていません。一方で、休職や転職で原因物質の吸入を回避することは、患者さんの経済的な負担が大きくなるだけでなく、その後に同じ職場で次の職業性喘息患者を生じる可能性があります。作業環境や作業方法の改善により、治療や新規患者の発症を防いだ事例は、国内の大規模事例でもコンニャク喘息、ホヤ喘息などが知られています。職業性喘息の診断、治療だけでなく新規発症の予防には、症状がある人の受診が契機となります。職場環境で悪化する喘息症状がある場合には、早めに呼吸器科を受診するか、勤務先の産業医などにご相談ください。
 
参考資料:
Balmes J et al. Am J Respir Crit Care Med 167;787-797 (2003).
Tarlo SM et al. Chest 134;1S-41S (2008)
日本職業・環境アレルギー学会ガイドライン専門部会監修 職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2013 協和企画 (2013)


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2013年07月29日 17:21に投稿されたエントリーのページです。

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