鶏卵アレルギー

鶏卵アレルゲンの大部分は卵白に含まれるタンパク成分で、卵黄よりも卵白の方がアレルギーが強く出ます。卵のアレルゲンは加熱によって大きく変化します。温度が高いほど、高温時間が長いほど、アレルギーは起きにくくなります。
アレルギーを起こす力の強いオボムコイドというタンパクは、水に溶けやすい性質があります。そのために、溶き玉汁の固まりを避けてスープだけ飲むことは、アレルギーを起こす可能性が高いと言えます。
マヨネーズは、生卵に準じた対応をしますが、プリンやババロアは、加熱が不十分な鶏卵と考えます。鶏肉は、鶏卵アレルギーとは関係がないため鶏肉を除去する必要はありません。また、イクラ、タラコといった魚卵も、鶏卵アレルギーとは関係ありません。
ウズラの卵の反応の強さは鶏卵より少し弱い傾向がありますが、鶏卵アレルギーの方の約半数がウズラの卵にも反応すると言われているため、鶏卵と同じレベルで除去することが必要です。
中には、鶏肉やイクラにアレルギーの人がいますが、イクラアレルギーの子どもが鶏卵アレルギーや魚アレルギーを持っているとは限りません。
卵殻カルシウムは、卵の殻から作られたカルシウムです。大部分の鶏卵アレルギーの人は摂取可能です。
リゾチームは、風邪薬によく使用される成分です。病院で処方される場合や薬局で風邪薬を購入する場合、この成分を含まない事を医師や薬剤師に確認することが必要です。

牛乳アレルギー

牛乳アレルゲンは加熱しても、アレルギーを起こす力はあまり弱まりません。牛乳アレルギーの人は羊、山羊の乳には、交差反応をしますが、豆乳は大丈夫です。しかし、赤ちゃんに飲ませすぎると大豆アレルギーを引きおこす場合があります。
ミルクアレルギーの乳児には、特別用途食品としてタンパク加水分解乳が厚生労働省より認可されています。ニューMA-1、ミルフィー といった治療乳があります。ニューMA-1でもアレルギー症状を起こす重症のミルクアレルギー児では、特殊ミルク「エレメンタルフォーミュラ」が使用されます。大きくなってからも、これらのミルクを料理に使うこともできます。
牛乳を除去すると、カルシウムの摂取は必ず不足します。小魚などをよく食べて、意識的にカルシウムを補うことが必要です。
牛乳成分が加工品に含まれている場合は、含有量が最も問題であり、加熱や発酵といった加工処理の違いはあまり影響しないようです。このように牛乳タンパクは、様々な加工に使用されるため、完全な除去のためには原材料表示に十分注意することが必要です。また、牛乳成分は調整剤をはじめとした医薬品に含まれる場合もあり、注意が必要です。
「乳」の文字がつく食品成分の中で次の成分は、牛乳とは関係なく除去の必要はありません。

乳化剤水と油を混ぜ合わせて白濁させる(乳化)ための添加物です。原材料のほとんどは大豆レシチンで、牛乳とは無縁です。
乳 酸乳酸カルシウムなど有機質の名前です。「乳酸菌」は、食べ物を発酵して乳酸を作り出す細菌の名前で、牛乳とは直接関係ありません。
乳 糖オリゴ糖の名前です。ただし、ほとんどの乳糖は牛乳を原材料として作られているため、乳糖1g中に数マイクログラム(100万分の1グラム)の牛乳タンパクが混じっている場合があります。食品中の乳糖で反応する牛乳アレルギーの人はごくわずかしかいませんので、除去が必要かどうかは主治医とよく相談して下さい。

小麦・米アレルギー

小麦アレルギーは、比較的頻度の多いことが知られています。ただし、IgE抗体が陽性であっても症状のないことも多く、正確な診断には食物負荷試験が欠かせません。また、IgE抗体価とアレルギー症状の強さもほとんど関係なく、どの程度まで除去をする必要があるかを診断するためにも食物負荷試験が必要です。
即時型小麦アレルギーの多くは、小麦とライ麦・大麦・オート麦などには交差反応します。米やその他の穀物には反応がありません。
その他の雑穀に含まれるアレルゲンは、ほとんどが穀物に共通の成分であり、米単独のアレルギー患者はごくわずかです。
小麦アレルゲンは、パンやクッキーのように高熱で焼かれてもアレルゲン性が低下することがありません。一方、味噌や醤油に含まれている小麦は、1年近い発酵過程でタンパク質がほとんど分解しているために、アレルゲン性がほとんどありません。
大麦を食べることはできませんが、麦茶には反応しないことが多く、病院で確認されれば飲むことができます。
小麦アレルギーの多くは成長と共に耐性獲得しますが、重症児では小学生になっても典型的な即時型の皮膚症状や呼吸器症状、アナフィラキシーを起こします。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、中学生から成人に発症し、食べた後で運動すると誘発されるアナフィラキシーですが、小麦はその原因食品として最も多い食品です。米に強い即時型アレルギーを起こすことは、ごく希にしかありません。

甲殻類・軟体類・貝類のアレルギー

エビを代表とする甲殻類のアレルギーは、小学生頃から増加して成人で頻度の高い食物アレルギーです。エビやカニを煮込んだ料理のスープでも反応が出ます。ある調査によれば、エビアレルギーの人の約65%はカニにも交差反応が見られますが、イカやタコ・貝類に交差反応する人は20%程度です。また、エビアレルギーの人の約80%は、エビせんべいは症状なく摂取可能で、高温で焼くという製造過程でのアレルゲン性の低下が推測されます。
エビアレルギーの多くは幼児期に発症して、耐性獲得することなく成人まで続きます。
また、甲殻類や貝類は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食品としても重要です。

魚アレルギー

魚の主要なアレルゲン成分は、魚種による構造の違いも少ないため全ての魚に共通して交差抗原性があります。そのため、魚アレルギーの人の多くは、ほとんど全ての魚に対して反応します。背の青い魚はアレルギーが出やすいと言われますが、IgE抗体の反応は白身魚でも違いがありません。
竹輪や蒲鉾のような「すり身」は、アレルゲン性がかなり低下しています。ツナ缶などでもアレルゲン性が低下すると言われています。魚アレルギーの多くの人は、カツオブシや煮干しのダシには反応がありません。ただし、粉末ダシになったものを沢山摂取すると、反応する場合もあります。
魚は、比較的典型的な即時型食物アレルギー症状として蕁麻疹やアナフィラキシーを起こします。

ソバアレルギー

ソバは、日本ではアナフィラキシーショックを起こす原因食物として有名です。症状を起こす主要なアレルゲン成分は未だに同定されていません。ソバのゆで汁や揮発した蒸気にも反応する事が多い事から、少なくとも水溶性で熱によって変性しにくい成分と思われます。また、そば殻枕の粉塵でもぜん息発作などを起こす人が多い事から、そば殻にも共通して含まれる成分がアレルゲンと考えられます。ソバアレルギーの人が、小麦や米など他の穀物にも交差反応することはありません。ソバを含む加工品であれば何でも強い反応性を持っています。コショウの風味付けに使用されている場合があり、注意が必要です。
ほとんどの人が、ごく微量の摂取やソバと共通の釜でゆでられたうどんにも強く反応します。ゆでる蒸気やそば粉の粉塵を吸入するだけでも反応するために、ソバアレルギーの人はうどん屋に入ることを避けているのが現状です。

ピーナッツ(落花生)とその他のナッツ類のアレルギー

ピーナッツは、欧米ではアナフィラキシーショックを起こす代表的な食物です。日本でも患者数は増えています。
ピーナッツやピーナッツオイルを含むあらゆる食品が、アレルギー反応の原因となります。カレーのルーやスナック菓子、店頭販売のサラダやサンドイッチなどにも隠し味として使用されていることがあり、十分に注意が必要です。落花生の殻にもアレルゲン性があり、豆まきで落花生を使用する風習のある地域では注意が必要です。
ピーナッツアレルギーの大部分の人が、全身蕁麻疹や呼吸器症状、アナフィラキシーショックを含む重いアレルギー症状を経験しています。また、ほとんどの人は幼児期に発症し、アレルギーは一生涯継続します。ピーナッツの強いアレルゲン性を考えると、食品に限らず、環境中のピーナッツアレルゲンにも注意が必要です。
ピーナッツ以外のナッツ類にも、強いアレルギー症状を起こすことがあります。日本では、クルミのアレルギーが比較的多いようですが、ナッツ類の摂取量が増加するに従って、欧米並みに多彩なナッツアレルギーが見られるようになってきました。

果物と野菜のアレルギー

乳幼児期から感作されて発症する果物アレルギーと、幼児期を過ぎてから、花粉症の発症と同時期に始まる果物アレルギーがあります。
花粉との交差反応では、シラカバ花粉とバラ科の果物(リンゴ、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド、西洋ナシなど)、ブタクサ花粉とウリ科の果物(メロン、スイカ、キュウリなど)、スギ花粉とナス科(トマト)などの組み合わせが知られています。また、ラテックス(ゴム)との交差抗原性もあり、輪ゴムや風船、ゴム手袋などに接触性の蕁麻疹や浮腫を起こすこともあります。ラテックスアレルギーの場合は、注射や点滴、手術などの医療行為で使用される医療器具にゴムが使われていると、アナフィラキシーを起こす危険があり注意が必要です。
アレルギーの報告の多い果物は、キウイが一番で、次いでリンゴ、桃、メロン、ブドウ、バナナなどが続きます。多くの人は、生の果物を食べた時には反応します。
食べた直後に口腔内や咽頭の痒みや浮腫を起こす口腔アレルギー症候群の症状がよく見られます。子どもはしばしば、「辛い」「苦い」「のどが痛い」「口が痛い」などと訴えます。無理に大量に食べると、呼吸器症状やアナフィラキシーを起こす危険もあります。また、果汁が皮膚について接触蕁麻疹を起こすこともあります。
バナナ・キウイ・トマトなど多くの果物では、果物の果汁を直接皮膚につけてプリックテストを行う(Prick-to-prick test)と診断できます。反応しやすい果物は、プリックテストが強く反応する傾向があります。多くの人は、反応を感じる果物と大丈夫な果物の区別がつくようです。口の中で違和感のない程度の食べ方をすることが、除去の原則です。
乳児期に発症した果物アレルギーの中には、幼児期に耐性獲得する場合もあります。成人の果物アレルギーは、花粉症と同じで耐性獲得することはありません。

肉類のアレルギー

鶏肉、豚肉、牛肉は、アトピー性皮膚炎の子どもの中で誘発症状が見られるケースは少なく、全ての肉類にアレルギー症状のある人は極めて希です。
しかし、肉類ではっきりと誘発症状を起こすケースでは、加熱してもアレルゲン性が低下しない成分に対する反応と考えられるため、加工品に含まれる成分にも注意が必要です。
ほとんどの食肉アレルギーは、アトピー性皮膚炎があって多種食物アレルギーの人に見られます。誘発症状の多くも、湿疹の悪化が中心で、はっきりとした即時型反応を起こすケースはごく一部に限られます。

仮性アレルゲン

仮性アレルゲンとは、食品中に含まれる化学物質で、アレルギー反応と同様な皮膚の赤みや痒みを引きおこすものを意味します。代表的な物質として、ヒスタミン・セロトニン・チラミンといった生体アミン類や、神経伝達物質の一つであるアセチルコリンが挙げられます。摂取した直後に即時型アレルギーに似た症状が見られますが、多くの場合は症状が軽く一過性で、1時間以内には消失します。しかし、こうした物質を大量に含む食品を摂取した場合には、全身の蕁麻疹や頭痛、ぜん息発作など強い症状を経験する場合もあります。

代表的なものは、サバ科の魚(サバ、マグロ、カツオなど)に蓄積されたヒスタミンによるサバ中毒や、古くて過剰に発酵したチーズによるチラミン中毒などが知られています。

ヤマイモは、アセチルコリンを含む代表的な食品で、とろろ芋で口のまわりが赤くなることは多くの人が経験します。しかし、中にはヤマイモアレルギーで全身症状が起きる場合もあり、IgE抗体の検査による確認が可能です。

授乳中のお母さんの除去

母乳中には、お母様の食べた食物がごく僅かに出てきます。

母乳中に含まれるアレルゲンの量は、アレルギー症状を起こす濃度の千分の一程度(母乳1mlあたり数十ナノグラム)です。アレルゲン食品を食べると、その後1時間から5時間程度の間、母乳中に出てきます。

母乳中のアレルゲンは、量が少ない上に大部分がIgA抗体にブロックされているため、赤ちゃんが母乳を飲んでも症状を起こさないか、ごく軽い症状のことが大部分です。

母親の除去食は、母親自身の健康や生活に大きく影響するため、必ず主治医の先生と相談をしながら進めて下さい。

妊娠中の除去食によるアレルギーの予防

妊娠中・授乳中に卵や牛乳など特定の食物を除去して、赤ちゃんのアレルギーを予防できないか、という研究は、以前から世界中で行われています。その結果、すべての研究で、アトピー性皮膚炎や喘息など、アレルギー疾患全体を予防する事に失敗しています。つまり、妊娠中の除去食で、アレルギーを予防することはできません。